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第85話 族滅の予感

父上が僕を責め立てることはなかった。そのことに安堵しながら僕は話を続ける。


「ケーリンネガー国王が始めからこの策略を考えていたのではないかと思われます。僕とユリアラ王女の婚約話を内密に進めつつ、婚約発表した時点で何かしらの理由をつけて、僕の有責で婚約破棄。即座にケーリンネガー王国へ逃亡。国内外に僕の有責で婚約破棄になったと発表し、国民感情を煽る。婚約破棄に激怒するケーリンネガー王族、貴族、国民という図式が出来上がります。その先には、フロンガスター王国を討つべしという大義名分が出来上がります」


僕は自分の推測した事を一気に話した。


「アレクの考えはわかった。もし、ケーリンネガー王国が宣戦布告したとしても、互いの軍事力は五分と五分、その軍事力の均等こそが、これまでの友好国としての両国の平和が保たれて来たのだ」


「はい。僕も父上の見解には理解しているつもりです。ただ、ケーリンネガー王国がフロンガスター王国近辺の諸国と軍事同盟を組み、両国が宣戦布告でもしてきたら、その時点で軍事バランスが崩れ、フロンガスター王国は滅びる道しかありません。最終的には、みんなが大好き『族滅』というパワーワードの二文字が!」


「アレクよ。誰がうまいことを言えと言ったんだ!」


僕はうまいことを言おうとしたわけではないが、父上からツッコミを喰らった。



フロンガスター王国は西にケーリンネガー王国、北にグランプロス帝国、東にセレント共和国、南に海に面した位置にフロンガスター王国は位置している。軍事力の観点から言えばフロンガスター王国、ケーリンネガー王国、グランプロス帝国、セレント共和国は微妙なバランスで均衡している。


「その可能性は十分考えられるな」


さすが、父上は話がわかる。


「これから先の話になりますが、ここ数ヵ月の間に諸外国にはユリアラ王女との婚約破棄の件と僕の悪評が出回ると予想されます」


「そうだな。婚約破棄の件はすぐにでも各国に広まるだろう。婚約者ユリアラ王女に逃げられた愚かで、女にだらしない最低なクズでバカな王太子と噂を立てられるだろうが、お前はそれで良いのか?」


「良くはありませんが、今は仕方がありません。婚約破棄は事実なのですから」


王族の不名誉な噂はご法度なのだが、僕はその不名誉を甘んじて受けようと思う。しかし、父上が僕を心配してくれているのか、ディスっているのか、わからなのだが……


「もしもだが、ケーリンネガー王国が宣戦布告して来たらどうするのだ?」


「ここまでフロンガスター王国をなめたことをしてきたら、当然の事ながら迎え撃ちますよ」


「アレクよ。目がマジでヤバいんだが? お前、もっともらしい事を言いながら、単なる婚約破棄された私怨を晴らしたいだけじゃないのか?」


父上は僕の闘志に気付いたのか、当然のようにディスって来やがった。


「私怨なんて…… 僕にはそんな私怨(もの)はありませんよ。ただ父上にはどうしても聞いてもらわなければならない事があります。お願いしてもよろしいでしょうか?」


「なんだ。言ってみろ?」


父上は僕のおねだりに対して仏頂面で答えやがった。


「数ヵ月の間、僕に近衛両師団を預けて欲しいのです。フロンガスター王国近衛両師団を世界最狂のバーサーカーに変えて見せます」


「近衛騎士師団と近衛魔法師団をバーサーカーにか?」


父上は僕のバーサーカーという一言で心踊ったのか、無垢な少年のような目で僕を見ていた。サンペータとマリックは父上と真逆の目が点になっていた。


「そうです。僕が近衛両師団を生まれ変わらせますので、父上どうか僕に近衛両師団を預けさせて下さい」


僕は再度、父上におねだりをした。


「わかった。アレク、お前に近衛師団を任せる。私から両師団長に話をしておく。あとは頼んだぞ」


「ハッ! お任せ下さい」


そう言って、僕は部屋を出た。


自室に戻り、戦略的かつ戦術的にどうするかを考えねばならない。それに照らし合わせて、訓練なども変える必要もあるだろう。それと情報収集と情報漏洩対策も考えなければいけない。



――いろいろ考える事が多すぎるが時間が足りないよな。これも万が一の宣戦布告対策をしておかないと国民の未来に暗雲が立ち込めてしまう。



「そうだ! 明日から学園を休もう! それと、ファンクラブのヤツらに情報漏洩(ストーカー)対策を徹底しないとな。ヨシッ! アリシアを呼ぼう」


僕は独り言を呟き、アリシアを呼んだ……

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