第5話 ファンクラブの実態!
ファンクラブの悪行に身の危険を感じる。僕の後ろに誰か居るんじゃないかと辺りを見渡すが誰も居ない…… しかし安心は出来ない。ファンクラブの中にも隠密役がいるかもしれない。
「はい…… すみませんでした。私、ファンクラブがあるのを知らなくて……」
マリア嬢は素直に悪役令嬢ルナール・ミラ・フォクスト嬢に頭を下げ謝罪をした。
「わかれば良いのです。あなたもファンクラブに入会すれば、常にアレク様の○秘最新情報が手に入りますわ。あとファンクラブ会員向けに非公式ですがアレク様グッツも販売しておりましてよ」
「アレク様の○秘情報? ファン向けのグッツの販売?」
「ええ、そうですわ。何時何分に食事をされた。何時何分にトイレへ行かれた。など分刻みの行動がまるわかりですわ」
ルナール嬢は僕のプライベートタイムまで把握している事にドヤ顔をしていた。
一方で、マリア嬢は肩をプルプルと震わせて下を俯いていた。
そりゃそうだろ。ここまで監視という名のストーカーを堂々と宣言されたらドン引きされてもおかしくは無いだろう。実際に僕もドン引きしている……
「す、素晴らしいですわ。ルナール様! 私間違っていました。是非、私もファンクラブに入会させて下さい! お願いします!」
「そう、わかったわ。あなたの入会を認めます。ところであなたのお名前は?」
「ありがとうございます。ルナール会長! 私はマリア・ハーネストと申します。平民の出ですがよろしくお願いします」
「マリアさん、良かったわね」
「はい、ありがとうございます!」
ルナール嬢はマリア嬢の手を握り、
「同士マリアさん、これであなたも私たちの仲間よ」
「マリアさん、これからお互いアレク様ラブを高めて行きましょうね」
「これから命懸けでアレク様を追い続けるわよ。良いわね?」
「はい! 同士の皆様、よろしくお願いします」
『パチパチパチパチ』
「「「おめでとう! マリアさん」」」
ルナール嬢と取り巻き達はマリア嬢に向けて、祝福と歓迎の拍手をしていた。この見事な手の平返し、ルナール嬢の取り巻き達なんか恐い……
「マリアさん! 一つだけ言わせて頂戴」
「はい」
「いいこと。アレク様ラブには貴族も平民も無いわ。お互い平等でありアレク様のファンの一人として秩序を持って行動するように、あと、あなたのお友達にもアレク様のファンの方がいらっしゃっりましたら、是非ファンクラブの入会を進めてもらえるかしら?」
「はい! わかりました」
「それではマリアさん。ごきげんよう」
「皆様、ごきげんよう」
ルナール嬢達はその言葉を言い残し去っていった。そしてマリア嬢もスタスタとどこかへ消えていった。
――一瞬、修羅場になるかと思ってドキドキしたよ。ルナール嬢ってゲームでは悪役令嬢だったのにどうしちゃったんだろう? アレクの事になるとヒステリックになってしまい、手の施しようがなくなって超邪魔クセェーお嬢様だったのになぁ。
しかし、僕のファンクラブがあったとは驚きだ。別に悪い気分でもないのだが、実態が秩序あるストーカー集団と言うのは解せぬ。そして僕は公式にファンクラブを認めてないぞ? 一体、どこから公式になったのか怖くなり、考えるのをやめた。
◇
季節は秋へと変わり、マリア嬢の突撃となりの晩ごはん!? 並みの強引な接触は全く無くなったわけではないが、回数は減った。変わりにメインヒロイン以外のヒロインも登場することになったが、僕の華麗なスルースキルで敢えなく轟沈! ヒロインの中の1人でもあるヒロイン不動の不人気NO,1のメアリー・アン・ジェーンスター伯爵令嬢は僕に対して、ちょっかいを出すことなく遠くからチラ見する程度で好感が持てた。綺麗な黒髪に雰囲気も大人しい感じで、それも相まって好感が持てたのだろう。
ルナール嬢、マリア嬢、ファンクラブの皆様も始めのうちは遠慮していたのか、かなり遠いところで僕を監視していたのだが、今では目に見える所まで接近し、僕にあれこれちょっかいを出し始めた。隠密に監視をするということは無くなったのか……
「アレク、あの集団何とかならないのか?」
マリックがウンザリした顔で僕に言って来た。
「ああ、マリック。僕だってホトホト困っているんだよ。王宮ではメイド達に監視され、王宮から出ればファンクラブの連中に監視され、僕のプライベートなんて無いのにも等しいよ」
「しかしなぁ、本当にどうにかしないとマズイぞ」
ルブランが眉間にシワを寄せて考え込んでしまった。イケメンが考えている姿は絵になるが、眉間にシワを寄せるとイケメンが台無しになるぞ。
「ドールは何か良い方法はないか?」
僕はドールに話を振ってみた。
「ファンクラブ全員、ブッ殺しちゃいなよ。それが良い! うん、そうしよう! 連帯責任で親達も殺っちゃいなよ! 一族もろとも族滅にしようぜ!」
ドールはヤバイ事を言い始めた。何か精神的にあったんだろうか?
「ドール…… 僕はこれでも平和主義者だ! お前の言うブッ殺しな無しだ! 温厚なお前が物騒な事を言うとは思わなかったぞ? 何かあったのか?」
「アイツら俺に、お前の情報を聞き出したいみたいでな、俺のあとを付け回すようになったんだよ。それが婚約者様の堪に触ったみたいで、浮気者のお前とは婚約破棄だ! って言い始めちゃって、こっちも大変なんだよ」
「ドール、すまん……」
僕はドールな頭を下げた。
「実際問題、こちらに不利益が出ているようであれば何とかしないと…… アレク、お前アイツらに止めるように話せないのか?」
サンペータは恐ろしい提案をしてきた。
「出来るもんならもうやってるよ! 言った後の方が恐いんだよ! ヤツら何をするかわからん連中だ。有ること無いこと言って、逆に僕達が『ざまぁ』される危険性があるんだぞ!」
「そうだよなぁ、今のファンクラブはカルト教団と化しているからなぁ」
サンペータはヤツらの恐ろしさを少しは理解したようだ。
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