第24話 シンシアヌの森
絶望のあまり自棄になり学園をボイコットしてしまった。 ヨワヨワメンタル……
僕は王都を無我夢中で駆け出し、あっという間にシンシアヌの森に着いた。
「さあ、ヤローどもの鬱憤を晴らさせてもらうぞ」
意気揚々としているが、独り言の多いヤベェヤツにクラスチェンジしそうになる僕は、全てを忘れ獲物を探し始めた。
雑木林の中、僅かな日光が地面を照らす。隠密魔法で気配を消し、獲物が現れるのを待った。
「……………………」
『ギャーゴトゥルル ギャーゴトゥロロ』
暫く待ってみたが、可愛い小鳥のさえずりしか聞こえない。
「場所を変えてみよう」
僕はひたすら森の奥深くへと枝を払いながら進む。
何ヵ所か獣道を見つけたが獲物らしい獲物は見つけることは出来なかった。
森の奥へ奥へと進み、鬱蒼とした雑木林を抜けると…… 今までの薄暗かった光景から一気に太陽の日差しで明るくなり、目の前には平原が広がっていた。
「へえ~。こんな所があったんだぁ」
僕は休憩を取るため、草の上に横になった。どこまでも広い青空、暖かな日差しの中、草木の匂いと、それらのマイナスイオン軍団が全開で僕の荒んだ心を癒してくれる……
「ああ、僕はなんてちっぽけな存在なんだろう…… ゲームの中のアレクはこんな時、どうしていたんだろう……」
ふと、ゲームの中のラスボス、アレク王子の事が頭に浮かんだ。
――彼もヒロイン達に必要以上に追いかけられ、ウンザリしてたんじゃ無いだろうか? 僕は心が折れてしまったけど、彼は最後までラスボス、アレク王子としての責務を全うしたんだよな…… 彼にはどんな苦悩を抱えてヒロイン達と関わっていたんだろう…… 彼だって、落ち込んだり、ヒロイン達のハニートラップに引っ掛かりながらも耐えに耐えて乗り越え、ヒロイン達を処刑したり、国外追放して来たんだろうなぁ…… 今ならアレク王子のヒロイン達を処刑した気持ちが分かるような気がする。こんな事され続けたら、そりゃあ、誰だってブチ切れるわ。
『ざわ ざわ』
何者かが草の上を歩いている!? その音に反応し、僕はふと起き上がった。辺り一面を見渡すと一羽の鳥がたたずんでいた。
頭と体の羽は炎のように紅く、尾は長く七色に光、そして長い足。大きさはフラミンゴ位だろうか、
「あの鳥は!?…… 紛れもない、あれはエムタイの神! マモォール鳥じゃないか? 間違いない。あれは伝説のマモォール鳥!! 何でエムタイの神がこんなところにいるんだ!」
マモォール鳥は、何か僕に伝えようとしているのか、じっと僕を見つめている。
ぼくはマモォール鳥に向かって、正座をし、五体投地の礼拝を行った。エムタイの神への最上級の礼拝だ。
『よく聞くのです。アレクよ。あなたが苦しんでいる事は私にはよくわかります。苦しいでしょう、悲しいでしょう。でも、その困難に負けては行けませんよ。あなたにはあなたの使命、アレク王子としての責務があるのです。お行きなさいアレク。彼女等にエムタイの精神がなん足るかを圧倒的な武力で教えてあげるのです。きっと彼女等もエムタイの正義、暴力的かつ恐ろしさがきっとわかってもらえるでしょう。さあ行くのです! どんな困難にも立ち向うことが出来るあなたです。私はあなたをずっと見ていますよ』
僕の頭に直接、マモォール鳥の声が聞こえてきた。これがマモォール鳥の意思なのか?
「圧倒的な武力で…… ヤツらを殴る蹴るをしても良いってことですか?…… 僕の邪魔をする者はぶっ潰す!って事で良いとおっしゃるのですね?」
『そうです。男だから、女だからと言って差別はしては行けません。全ての命は平等なのです。そして、男女平等なのです。さあ、アレクよ。エムタイの恐ろしさをわからせてやるのです』
「ハイ! 全力でヤツらにエムタイの真髄を教えてやります!」
僕はそう言っていた。気が付くと両拳を握り、涙を流していた。
『あなたにお土産があります。それを持ち帰りなさい』
「ありがとうございます。マモォール鳥様、心の靄が晴れました! 本当にありがとうございました」
僕はマモォール鳥に向かって、また五体投地の礼拝をしていた……
マモォール鳥は僕の言葉を聞き、何処か大空へと飛んで行った。
僕の後ろには、大量の牛、馬、七面鳥、鶏、ダチョウ、豚、ワニ、タヌキの新鮮な死骸が転がっていた。
「ありがとうございます。マモォール鳥様。しっかり食べて、ヤツらに尊いエムタイを伝えて行きます」
僕はマモォール鳥が飛んで行った先を見つめていた。
「こうしちゃあいけない。早く血抜きをして帰ろう」
魔法を駆使して、血抜き、解体、内蔵の洗浄をして、収納魔法で異空間に詰め込んだ。これで、バーベキューの肉は確保出来た。あとは、サンペータ達また狩りに行って、もう少し食材を増やそう……
いつの間にか僕は明るい気持ちになっていた。これで、ファンクラブの集いに正々堂々と立ち向かえる……
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