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第23話 監視と脱出

ファンクラブのヤツらに敗北してから一夜が過ぎた。屈辱、人間不信、存在意義の否定のトラウマをブチ込まれ、僕は生きる希望を失ってしまった。


「今日は体調が優れない…… 学園へ行きたくない」


つい、学園へ行きたくないと感じてしまい、つい専属メイドの『アリシア』に言ってしまった。


「では、ルナール会長へ連絡しておきますね」


「連絡は学園じゃないの? なぜ、ルナール嬢へ?」


「ファンクラブの会員としての義務でございます」


アリシアは当たり前では無いことを当たり前のように言い切りやがった。


「もしかして、君もファンクラブの会員なの?」


「私はアレク様の専属メイドです。当然ファンクラブには入会しております」


「左様ですか……」


こんな身近にファンクラブの会員がいるとは油断の隙もない。


「それで、僕の近くでだれがファンクラブの会員さんなの?」


アリシアの他にまだ何人かいるような気がして、率直に聞いてみた。


「個人情報に付き、名前まではお答えは出来ませんが、ほぼ全員とだけは言っておきましょう」



――なんでしょう? このメイドさん。なんて正直者なんでしょう。僕にプライベートが無いという現実を突きつけられてしまった…… 僕の赤裸々(セキララ)日記を執筆してファンクラブ会員に売っていそうで怖いのだが。



「では、アレク様。ルナール会長へ本日は学園をお休みするとお伝えしておきますね」


「ルナール嬢への連絡の前に学園に連絡してくれ」


呆気に取られながらアリシアに指示を出すと、


「それは出来かねます。ファンクラブ条約第1章3条アレク様の行動報告は全てにおいて最優先すべしとなっておりますので」


アリシアは当然だと言わんばかりにドヤ顔で言い切った。


「そ、そうなの……」


ファンクラブ条約の恐ろしさに、もうそれ以上の言葉が出来なかった。


「では、報告して参ります」


颯爽と寝室から出ていこうとした。


「アリシア。ちょっと待ってもらえるか」


どうしても気になることがあり、アリシアを止め聞いてみた。


「時々、僕の下着がTバックのビキニパンツが入ってるけど、君の仕業か?」


時々紛れ込んでいるセクシー下着について尋ねた。


「私ではありません。他の者だと思います」


アリシアは澄ました顔で答える。


「一体何の目的でそのようなことをするのだ。ファンクラブの指示か?」


「いいえ、違います。多分、他の者がアレク様のボディーラインを気にしての事だと思われますが」


「ボディーライン?」


「下着のラインが浮き出ないようにとの配慮でしょう。お分かりですか? アレク様はファンクラブ会員の希望であり、命を懸けるに値する尊きお方です。全てにおいて完璧でなければなりません。アレク様に粗相などあれば、王宮全てのメイド、使用人は自決する覚悟で全身全霊でお仕えしているのです!」


アリシアは真顔で一気に答え、寝室から出ていった。


「あ、あ、ありがとう」


僕はそれ以上の言葉が口から出なかった。



――怖い…… マジで恐い…… 僕が一体ヤツらに何をしたというのだ…… ストーカー行為、嫌がらせ、視姦、ヨダレ、鼻水、ハニートラップ、策略、人間不信(トラウマ)存在意義の否定(ビバトラウマ)、監視。


僕は何でここまでされなくてはいけないのか? これが、ラスボス攻略者に課せられた試練なのか? ラスボス攻略者とは一体……



ファンクラブのヤツらは僕が今日、休むとアリシアから報告があるはず、お前達の思い道理になると思うなよ。誰も居ないうちに王宮から脱出しよう。


急ぎ服を着替え、窓から逃げた。僕の寝室は三階にあるが、魔法を駆使して脱出した。


「これからどこに行こう。とりあえず、シンシアヌの森に行こう」


僕は独り言を呟き、隠密と身体強化の魔法を使い、建物の屋根を悪魔的跳躍で次々と跳び、狩り場として有名なシンシアヌの森へ急いだ。


剣を忘れてしまったことは後悔したが、僕には酔拳とエムタイがある。 ――!? ここで酔拳で使用する酒が無いことに気付く。


酔拳は酒がなければ、その威力は大幅に減少してしまう。酒を呑むからこそ酔拳なのだ。


「仕方がない…… エムタイで狩りをしよう。エムタイの神マモォール鳥よ! 我を導きたまえ!」


マモォール鳥に祈りを捧げ、シンシアヌの森へ急いだ。

お読みいただき誠にありがとうございます。

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