第21話 釣り野伏
クリス嬢に話を振るマリア嬢。僕もクリス嬢がどんなぶっ飛んだ事を言うのか気になるところだが、大方の予想では、またヤベェ中二病発言になるだろう……
「アレク様のエロ禿げオヤジ! キモ過ぎワロタ!」
「「「――!? えっ!?」」」
クリス嬢は予想に反して、僕を罵倒して来た。
「クリスちゃん! アレク様に何を言ってるの?」
さすがのマリア嬢も予想の斜め上の発言だったみたいで、狼狽えていた。
「ク、クリスさん!? いくらなんでも言って良い事と悪い事があるのよ」
ルナール嬢とマリア嬢と同様に狼狽えていた。
「僕は禿げてねぇーよ!」
勢い余って大声を出してしまった。
「「えっ!? そこなの?」」
ルナール嬢とマリア嬢は僕の発言にも動揺していた。
「アレク様。オッパイしか見てなかった。私、オッパイ小さい」
「「ハァ!?」」
クリス嬢の異常とも取れる観察眼に、ルナール嬢とマリア嬢は自分のお胸様を見た。
「ボクハ フローラジョウノ オオキイオッパイ ミテナイ ナニカノ カンチガイダ」
僕は突然の指摘に動揺していた……
「私の邪神眼に間違いはないし誤魔化せない。エロ禿げオヤジが何を言っても、誰も信用しない」
クリス嬢は眼帯を外し紅い瞳を見せた。右目は碧、左は紅!? 『オッドアイ』なのか? まさか本当に『邪神眼』だったのか!? 何よりも今はクリス嬢が明らかに僕を貶めようとしている。
ルナール嬢達もジト目で僕を見つめていた。
「ゴカイデス ホントウニ フローラジョウノ キョニュウハ ミテナイデス」
「胸ですか? 大きな胸が好きなんですか! 私は成長段階です。期待して下さい!」
マリア嬢はお胸様を強調し、とんでもないことを言い出した。
「――!?」
「アレク様。信じていたのに……」
ルナール嬢はメソメソしながらエロオヤジを疑われてしまった…… 僕は禿げていない(泣)
「あら、みなさん。まだお帰りじゃありませんの? ウフフ」
フローラ嬢が再び戻って来た。
「フローラさん、聞いてアレク様が!」
クリス嬢がフローラ嬢にお胸様疑惑を事もあろうにご本人様に説明をしようとしている!
「待てー!」
僕はクリス嬢がフローラ嬢に近寄る前に遮った。
「何ですかアレク様?」
何気ない顔で答えるクリス嬢。
「一体何が望みだ」
僕は権威と今まで築き上げて来た信頼と信用が崩壊してしまう…… ここで、はじめてヤツらの策略に嵌まったことを悟った。
クリス嬢はニヤリと笑い、
「次のファンクラブの集いで私達と一緒に行動する事」
「――!?」
僕は周りを見渡すとルナール嬢、マリア嬢、フローラ嬢はニヤニヤと笑っていた。ミレーユ嬢は天使の微笑みだった。ミレーユ嬢は何も考えていないようだ。
――ヤツらにこんな策略が出来るはずがない、一体誰が黒田官兵衛並みの軍師なのだ!
「あれ!? 珍しい、みんなお揃いで」
偶然? 偶然なのか? メアリー嬢がやって来た。その顔は『みんな上手くやってくれたようね』みたいな表情だった。
――無害だと思っていたメアリー嬢がファンクラブの軍師だったとは微塵にも思っていなかった…… それにしても、諸葛孔明、司馬懿仲達、黒田官兵衛、竹中半兵衛をも越える軍師に会えるとは…… いや、最狂の妖怪『首おいてけ 首おいてけ、なぁ!!』のヤベェ狂乱島津家四兄弟。島津義久、義弘、歳久、家久を一人にまとめた姿がメアリー嬢だったのだ。
フローラ嬢を囮役とし、僕がフローラ嬢に近付く、実際にはフローラ嬢が近付いて来たのだが、フローラ嬢が去る。隠れていた伏兵役のルナール嬢、マリア嬢、クリス嬢、ミレーユ嬢が三方から僕を取り囲む、そして、フローラ嬢が再び現れ僕の逃げ道を塞ぎ、五人で僕をボコボコにする。まさにこれが俗に言う『釣り野伏』だった。それを指揮したのが、あの無害なはずのメアリー嬢だったとは……
この僕を油断させるなんて、今までのメアリー嬢の行動が策略だったとしたら、とんだタヌキヤローだ!
僕は釣り野伏の策略に嵌まり、己の不甲斐なさに落胆し膝を付いた。
「わ、わかった。しかし、ファンクラブの人達の交流をしなければならない。それは僕の責務だ。それ以外は君達と共に行動しよう」
それだけが、僕の出来る精一杯の抵抗だった。
「キャァァァァ、 ヤッタわー! 私達の勝利よ!」
ヤベェヤツのマリア嬢は跳び跳ね狂喜乱舞し、勝利を喜んでいた。
「ウフフ。ごめんなさいね。アレク様」
フローラ嬢は不適な笑顔を浮かべ謝罪をしていたが、悪びれている様子は無い。ヤベェ。
「私の邪神眼は有能」
ドヤ顔のクリス嬢。ヤツがヤベェキーパーソンだったとは……
「これでアレク様と一緒に居れるわ」
純粋に喜ぶヤベェヤツのルナール嬢。
「一体、何があったのかしら?」
今、何が起こっているのか理解できない。超天然ヤベェヤツのミレーユ嬢。
「他愛もない……」
メアリー嬢がファンクラブの中で一番、狂鬼的ヤベェヤツだった……
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