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第2話 アレク・ガルラ・フラスター

おっ!? なんだ? 何が起こったんだ? 体が揺れる! 


「助けてくれー! 一体何が起きているんだーー!」


周りに人の気配と声はするが、誰も僕の声に反応しない。そして、誰だかわからないが僕を優しく持ち上げ、どこかへ移動しているようだ。


「降ろせー! 降ろしてくれー! 何処へ行こうとしているんだ!!」


僕を持ち上げた相手に僕の悲痛な声は届かない。届かないと言うよりは理解出来ていないのかのようにスルーされていた。


僕の体を軽々と持ち上げられるくらいのだからガチマッチョに間違いない。それにしてもガチマッチョにしてはゴツゴツした感触はない。逆に柔らかい毛布に包まれているような感触、男性とは違う、多分だが女性なのだろう。歌を歌うような…… リズムに乗った言葉なのだろうか、何を言っているかわからないが言葉を発していた。


『チャンポン』 


抱っこされながらぬるま湯に浸けられ、体をなぞるように触られ、完全にセクハラだ。


「何をしているんだ! そこはやめろ! 僕のデリケートゾーンに触るな! 恥ずかしいからやめろ!」


手足をバタバタと動かしたいが、それも上手く出来ない。不安になり、何でも良いから何かを握りたくなる。



――!? もしかして僕は裸なのか? 今まで全裸で抱っこされ、お風呂に入れられる? まさか!? 要介護のカラダになってしまったのか? 道理で目もぼやけて良く見えない。耳も良く聞こえない。声を出しているのに相手に伝わらない。身体が自由に動かない…… いつの間にこんなことに……


一体バスで何が起こったんだ?





――半年後



要介護の生活から、ここで、やっと自分の置かれている状況に理解が出来た。


僕は赤ん坊になっていたのだ!! これは衝撃の事実だった。日々、屈辱にまみれながらも事実を受け入れる事が出来なかったが、ハッキリ自分が赤ん坊だと気が付いた時にはなんとか受け入れる事が出来た……


マジか…… 排出物をした時の不快感と屈辱感には慣れないが、生チチからの母乳には興奮させられた。今まで生きて来た経験の中で、体験出来なかった生チチを見る。触る。吸うという行為を経験出来た事に感謝の意を表したい…… が、今の自分には何も出来ない。 


僕に出来る事は、寝る。泣く。寝返りを打つ。言葉にならない言葉を言う。手足をバタバタとさせる事しか出来ない…… どうか、こんな不甲斐ない僕を許して欲しい……


そんな屈辱と快楽の生活は長くは続かなかった。成長につれ、周りの状況をさらに理解出来るようになった。が、ある事実が判明したのだ!


僕の名前が『アレク・ガルラ・フラスター』と言うのだ! 何度も何度も自分の名前を確認してみた。しかし、その名前に間違いがはない、国名も何もかもがゲーム設定と同じだった…


まさか、プリスタの王子と偶然同じ名前だろうと思っていたのに、実はブリスタの世界。しかも、何人もの女性(プレイヤー)を泣かせ、僕を『王子ぶっ殺すマン』に爆誕させやがった。あのド鬼畜王子になっているとは!!  


――こ、こ、これが転生というものなのか! よりによってド鬼畜王子に転生するなんて…… この世には神も仏もないのかと恨んだ時期もあったが、こうなってしまった以上はしょうがないと諦め、この乙女ゲーの世界を楽しむことにした。


楽しみ方第一提案。

勉強、運動は出来るが、その他はポンコツになる。これでヒロインどもは、これでドン引きになるだろう。


楽しみ方第二提案。

ヒロインどもに会う前に彼女を作る又は婚約をする。


楽しみ方第三提案。

ヒロインどもの性格が天使だったらヒロインの誰かと結婚する。顔とスタイルはゲームで確認済み。超可愛い!


楽しみ方第四提案。

ヒロインどもが最低なヤローだったらゲーム通り、バットエンドに(いざな)いドキドキワクワクな処刑を実行する。(嘘)


楽しみ方第五提案。

ラスボスとしてヒロインどもを駆逐する。(本当)



――完璧すぎる…… 完璧すぎて自分の才能が怖い……



バッチ来い! ヒロインども! お前らをチョロイン地獄の刑にしてやる! 


と、気合いが入る僕だが、前世ではプライベートでまともに女性と話したことはない。そのほとんどが何かの連絡事項のみだった…… 泣くな僕!



僕はこの乙女ゲーの世界を楽しむため.あらゆる努力をした。勉学、魔法、運動、帝王学、オシャレ、戦術、戦略、剣術、槍術、馬術は勿論、お笑い、お酒を呑みたいだけで酔拳、蝶のように舞い、蜂のように刺すに憧れてエムタイを15才でマスターしてしまった。


この世界にパラメーターと言う概念が有るとすれば、MAX近くまで行ってると思う。努力の結晶とは、この事を言っているのだろう。


国王である父上にお願いし隣国のケーリンネガー王国第二王女で一つ年下のユリアラ・カント・ジャングスター王女との婚約も内密であるが決まった。


まだ、会った時はないが、ユリアラ王女の肖像画を見た時には、いくらなんでも美人すぎるだろう。かなり盛ってるんじゃないかと疑惑を抱いている……


楽しみ方提案の準備は出来た。


「さぁ、いつでも来るが良いヒロインども! テメーらに明日(あす)は来ない無いことを思い知るが良い! 明日のプシューデント学園入学が楽しみだ! 地獄を見るがいい! プリスタの鬼畜ラスボスとしてお前らの前に塞がってやろう!! ワッハハハハ!!」



王宮に僕の高らかな笑いが木霊していた。使用人のみなさんびっくりさせちゃってごめんなさい。元庶民のゲスな笑い方をする僕を許して欲しい…… 


お読みいただき誠にありがとうございます。

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