第112話 ざまぁにはざまぁでお返し致します
ギョシン司令官とウィザード副司令官は、二人の亡骸を運び終わると、静かに謁見の間を出て行った。
僕はその場に膝を抱え座り込み、自分には抱えきれない感情をどこに向けて良いのか分からなくなってしまった。
もし、ユリアラが浮気バレした汚嫁のように
『あの男に騙された。私は被害者なの。私は悪くない。だから私達はやり直せるはず。だって私達は愛し合ってるんだから。それに私の傍にはあなたしかいないの。愛し合った仲じゃない、私を助けて。慰謝料とか財産放棄をしろとか言わないで、あなたの大きな心で包んで欲しい。あなたとの子供が欲しい。今ならあなたの子供を産んであげる』
なんて言われた方が、コイツは人間のクズだと割りきれていたのに…… 最後のごめんはキツすぎる。どう考えても許すしか無いだろう…… 自己満足の卑怯者が……
アイスキー、お前もお前だ。皇族のプライドなんて捨てちまったら、ユリアラと幸せになれたのに…… なんでそんなくだらないものに固執するんだよ。チキショー……
僕の提案した妥協案が良くなかったのか、もしかしたら言い回しが悪かったのか、エムタイや酔拳を学ばなければ良かったのか、ヒロイン達に打倒ヒロインなんて言わずに無視をしてれば良かったのか、ヒロイン達に悪態をつかないで、イチャイチャハーレムニートをしてれば良かったのか。そうすれば、グランプロス帝国にもケーリンネガー王国にも関係の無い暮らをして行けたかも知れない……
そうしていたら、あの二人を死なせる事は無かったかも知れない。僕にチートスキルやチートギフト、チート魔法があったら…… こんな事にはならなかっのか…… そもそも転生した自分の存在自体が間違っていたのか……
「自分自身が分からなくなってしまった。教えてくれよ。アイスキー、ユリアラ……」
いくらアイスキーとユリアラを責めても、もう二人はこの世にいない……
分かっている事は二人は死に、僕が生き残った。それだけだった。
アイスキー…… ユリアラ…… 僕は生きて生き抜いて、必ず幸せになったやるからな。君たち二人が出来なかった幸せを…… 僕は君達の代わりに幸せに絶対なってやるから。約束だ……
それとユリアラ。君は婚約破棄の時に、僕に『ざまぁ』と言っていたね。君はアイスキーの後を追い、僕は生きて幸せになることを誓った。簡単に死を選んだ君とは違って、僕は生きる…… 生きてやる……
「ユリアラ、この世で幸せになれなくて…… ざまぁ。僕は生きて必ず幸せになってやる。アイスキーと二人仲良く、僕が幸せになっているところを天国で見ていろ! ざまぁにはざまぁで返させていただくよ。このチキショーがっ!」
◇
僕はフラフラと立ち上がり、謁見の間を出た。
あとのことは、ギョシン司令官とウィザード副司令官に任せ、僕はフロンガスターへと帰ることにした。
帰郷する前に、アイスキーとユリアラが眠る墓所に訪れた。見晴らしの良い高台で、質素な墓石が二つ仲良く並んでいる。
「ここは、今は寂しいが、落ち着いたら必ず改葬してやるからな。それまでは、すまないが今は待っていてくれ。アイスキー、ユリアラまた来るからな。またな!」
そう言い残し、フロンガスターへと向かった。
◇
フロンガスターに着くと王宮の者達は、僕の金髪から銀髪に変わり果てた姿に絶句していた。
特に宮門の門衛は僕を見て、こともあろうに
「アレク様お帰りなさいませ。おやっ!? その髪形は?」
「いや~ あっちで色々あってね」
門衛の質問に適当に答えると、
「わかりましたぞ! 思春期特有の中二病ですね? 眼帯なんかしてたら完璧なんですけどね。アレク様は、まだまだ精進が足りませんなぁ~」
「違うよ。僕は中二病患者じゃないから!」
中二病を否定すると、今度は
「あっ~ あれですか。反抗期ですか? アレク様が今頃反抗期真っ最中だったとは…… グレるの良いですが、ホドホドにして下さいね」
「……………………」
僕は無言のまま宮門をあとにした。
――この国の連中は王族に対しての尊敬と礼儀が足りないのではないか?
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