第110話 決闘の果てに
ついに決闘は最終局面を迎えつつあった。
僕は両腕を鳳凰が翼を羽ばたくように広げ、左膝を曲げて上に上げた。まさに鳳凰が今にも飛び出そうとしている姿に似ていた。
一方、アイスキーは長剣を両手で持ち、上段の構え、重心はやや右側にずれている。
僕は瞬時に、上段の構えから僕の左肩を目掛けて振り下ろし、右腰に抜ける。俗に言う、真っ二つである。アイスキーの最終奥義『飛翔天元覇龍』は、薩摩の示現流に似ていた。アイスキーもまた、薩摩隼人のバーサーカーだったのか?
僕は右足でピョンピョンと跳ね間合いを取る。アイスキーも摺り足で自分の間合いをはかっている。
お互いに間合いに入るか入らないの所でにらみ合いは続く…… 周りの人間も固唾を飲んで見守っていた。ユリアラは神に祈りを捧げるかのように両手を合わせ、アイスキーの勝利を願っているようだった。
お互いの額から汗が滴り落ちる……
一滴の汗が地面に落ちた。その瞬間、お互いが同時に動く、
僕は左足を前に踏み出し前に飛ぶ。右膝を曲げ、必殺の右膝蹴りを狙う。
アイスキーは、
「チェストォーーーー!!」
気合いの入った雄叫びと共に僕との距離を縮め、僕の左肩に照準定めて長剣を振り下ろした!
まるで、スローモーションのように時間が進む感覚…… 極めし者達が到達出来るという時間の狭間とはこういう事を言うのだろう。実際の時間から見たら、ほんの1秒、2秒の世界だろうが、僕とアイスキーはそれ以外の時間を感じていた。
僕は跳び跳ねている以上、もう軌道修正をすることが出来ない。このままではアイスキーの長剣が確実に僕の左肩を……
――咄嗟の出来事であった。
勢い良く振り下ろされる長剣の平地を左のグローブの甲で払い除け、アイスキーは長剣を払い除けられた勢いで右側にバランスを崩し、僕自身もバランスを崩したが、一度右足で床に着地し、左足で渾身のミドルキックをアイスキーの隙だらけになった腹部に渾身の一撃を入れた。
アイスキーはバランスを崩れた状態で、僕の一撃必殺のミドルキックを受けた衝撃で後方に飛ばされてしまった。
僕もそのままバランスを崩し倒れてしまった。僕は倒れたままアイスキーの方を見ると、彼は仰向けになったまま動かない……
僕はヨロヨロと立ち上がり、アイスキーに近付いた。
アイスキーの口から血反吐が溢れていた。アイスキーを抱き起こすと、
『ゴホッ ゴホッ』
アイスキーは、咳と共に血を吐き出した。
「アイスキー! 大丈夫か!」
僕は大声で彼の名を叫んだ。アイスキーは、
「アレクか…… どうやら内蔵をやられたらしい…… 最後の一撃は凄かったぞ……」
『ゲホッ ゲホッ』
さらに大量の血反吐を吐いた。
「アイスキー! しっかりしろ!」
僕は涙目になりながら叫んだ。アイスキーは、
「私に勝った漢が…… そんな情けない顔をするな…… 私は…… 」
アイスキーは苦しい表情の中にもうっすらと笑いかける。
「僕はアイスキーとユリアラをどんなことをしても護る。だから生きてくれ!」
「ありがとう…… すまん…… その約束は護れそうもないな……」
『ゲホッ ゲホッ』
アイスキーは血反吐を吐きながら苦悶の表情を浮かべる。
「ユーリ……」
アイスキーはユリアラの名を呼んだ。
「ユリアラ殿! アイスキーが君を呼んでいる! 早く来てくれ!」
僕は涙声になりながらユリアラを呼んだが彼女も現実を受け入れられないのか、手を口に当て震えて一歩も動けないようだ。
「誰でも良い! 早く、ユリアラ殿をアイスキーの元へ連れて来てくれ!」
僕の言葉に素早く反応したギョシン司令官とウィザード副司令官が、彼女を支えながらアイスキーの元へやって来た。
アイスキーはユリアラの頬に手を当てると、
「すまないユーリ…… 君を幸せにすると約束したのに……」
彼女は大粒の涙をこぼしながら、
「アイス…… アイス…… 死ぬとか言わないで…… どうか私の為に生きて……」
アイスキーは彼女の言葉に、
「ごめん…… 君だけは…… 君だけは…… 生きて幸せになってくれ…… それとアレク……」
「なんだ アイスキー? 言いたい事が有ったら何でも言ってくれ」
僕が声をかけた掛けると、アイスキーは……
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