第11話 これで良いのかお茶会!
――ああ、神よ。神は存在しないのですか? 正面のヤツらだけでもこの世から抹殺してください……
正面のお3人方の隣にはミレーユ嬢が座り、その3人に向け、ニコニコ笑顔で会話をしているようだった。会話が噛み合っているのか謎だが……
席順、僕を中心に右側からマリア嬢、お茶会メンバーの唯一の良心である普通の女子生徒、ヒロインの1人である『クリス・アン・チャンスキー』男爵令嬢だ。左片目には眼帯、左腕にはボロボロの包帯を巻き、いかにも中二病を発症させているのではと思いたくなるご令嬢だ。僕といろんな部分で共通することがあるかもしれない。その隣には涙と鼻水メイド、危ないオヤジ、ばっちぃーヨダレと続き、ミレーユ嬢、最後のヒロインとなる『フローラ・リン・シャンブー』侯爵令嬢で、気品に満ちたお姉様キャラと言った感じだ。そして、最後に僕の左隣にルナール嬢という布陣だ。もし、これが戦だった圧倒的不利な状況で辛い。
マリア嬢は目をキラキラさせながら僕に問いかけたきた。
「先程はお見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした」
「いや、特には気にしていないよ」
僕はスルー気味に答える。
「でも、アレク様が私の名前をご存知だったなんて嬉しいです!」
マリア嬢は満面の笑みで僕に顔を近付けようとしていた。
『ゴホン』
ルナール嬢が咳ばらいをして、マリア嬢はハッとした顔になり顔を遠ざけた。マリア嬢はルナール嬢に対して『良いところだったのに邪魔しやがって! 絶対ぶっ殺す!』そんなドス黒い表情でルナール嬢を呪いを掛けるように睨み付けいた。
ルナール嬢はそんなマリア嬢の呪いを撥ね付けるように、
「あらあらマリアさん。淑女がそんなはしたない真似はしては行けませんよ。ファンクラブ条約第1章第1条、『ファンクラブ会員はいついかなる時も紳士淑女たれ』ですわ。これを忘れてしまいますと単なる下品な迷惑集団に成り下がってしまいますわ」
と、ドヤ顔で言いはなった。
「ルナール会長…… すみません。アレク様の隣ということで我を忘れてしまいました」
ルナール嬢は椅子から立ち上がり、
「良いのですよ。あなたを責めているのではありません。私だって…… いえ、ここにいる者は、遠い存在であり、憧れの推しが目の前に居るのです。我を忘れるのは当然の事。さあ、抽選に漏れてしまった人たちの為にも、ここはしっかりとアレク様を愛でなくては私達の責務は果たせません。語るのです! 一人でも多くの方にアレク様の尊さを! 素晴らしさを! 推しの全てを!!」
ルナール嬢は推しの素晴らしさを語ったり、最後に直立不動で右手を斜め上に上げ、
「ジーク・アレク!!」
「「「ジーク・アレク!!」」」
『パチパチ パチパチ』
お茶会メンバーと抽選に漏れてしまった者達は椅子から立ち上がり、掛け声と割れんばかりの拍手がルナール嬢に向けて送られた。
――しかも、スタンディングオベーションとは、今の僕はどんな反応をしたらいい?
「アレク。早く何か言え、何でも良いから何か言え」
動揺している僕の耳元でサンペータが呟いた。
「――!? あ、あ、ファンクラブのみんなの意気込みがものすごく感じられたよ…… またファンクラブの集いを開催しよう。僕も君たちと共にある」
僕はあまりの動揺に心にも無いことを言ってしまった。
「本当にまたファンクラブの集いをしてくださるのですか? 今の言葉、言質を取りましたわよ。みなさんも聞きましたわよね? アレク様は私達と共にあると!」
ルナール嬢がファンクラブのみんなに叫んだ。
「「「はい! 聞きました!」」」
王宮に集まったファンクラブ会員は大きな声で返事をした。
――ハッ。と自分の言葉に気が付いた時には全てが遅いと後悔にさいなまれてしまった。僕は攻略対象者の最後の砦であり、ラスボスだ! こんな不甲斐ないラスボスが許されるはずがない。助けてくれ、心の師匠!
心の師匠であるメアリー嬢は一応。みんなに合わせて立ち上がり拍手をしていたが、『もう茶番劇はやめて、早くお菓子が食べたい』という怠い表情だった。
さすが心の師匠! 一寸のブレを感じさせない!
結局、お茶会はお茶会メンバーだけではなく、抽選に漏れた者達にも愛想を振り撒き終始穏やかにファンクラブの集いは終わった。
ファンクラブ会員にとっては良いガス抜きにはなったと思うが、ヒロイン達とは距離を置きたいが、クリス・アン・チャンスキー嬢とは『邪神眼』と左腕に宿る『漆黒の魔龍、デモンドキル・フューエル』について語り明かしたいと心からせつに願った……
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