第108話 決闘
僕の決闘の提案に思案を重ねるアイスキー皇太子。
「分かった。その決闘…… 受けて立とう。確認をしておきたいのだが、先程のアレク殿の提案は本当に約束してくれるんだろうな」
アイスキーは疑念を抱いているのか、疑いの目で僕を見つめていた。
「ああ、漢に二言はない。それと、この場にいる者が証人だ。みんな、僕の言葉はちゃんと聞いていたよな」
僕はヒャッハー達に問いかけた。
「ハイル・ヒャッハー! 俺らの大将様はどこまでもヒャッハーだぜ!!」
答えにならない答えが、ヒャッハー達から聞こえて来た。 ――ハイル・ヒャッハーってなんだよ?
「だそうだ。これで安心したかい?」
僕は王族スマイルでアイスキーに返してあげた。アイスキーは、
「分かった…… 先ずはアレク殿を信じることにしよう」
アイスキーも先程のヒャッハー達の答えに呆れた様子で答えていた。
「信じてくれてありがとう。アイスキー皇太子は武器は何が良い? 好きな武器を言ってくれたら準備させるから」
「じゃあ、長剣で頼む」
アイスキーは長剣をチョイスした。
「スタッフゥ~ 僕の長剣を持ってきて~」
僕はカオスな雰囲気を打破するために冗談混じりで言うと、サンペータは未使用の僕の長剣を持って来た。その長剣を受け取り、鞘から長剣を抜いて見せた。
「うん。普段使ってないから全然刃こぼれもしてないし良い剣だ。アイスキー皇太子、少し待ってもらえないか?」
「ああ、別に構わないが」
僕はグランプロス帝国の宰相か何か分からないが、首を跳ねられた遺体に近付き、一振振って見せた。その瞬間、遺体の右腕が気持ち良くバッサリと落ちた。その長剣を見ながら、
「うん、切れ味も最高だね。血も付いてないし、刃こぼれもしていない。最高の剣だ」
僕はアイスキーに近付き、手渡しで長剣を渡した。
――僕はいつでもどこでも紳士の嗜みは忘れない。
「ああ、あ、ありがとう。そ、それで、アレク殿の武器はどうするのだ?」
アイスキーも僕の紳士の嗜みに感動しているのか少し言葉を噛んでいた。
「僕かい? 僕は普段から武器は使わないよ。僕も準備してくるから、その間に長剣でも振って待っててくれ」
僕はそう言って、謁見の間を出た。
◇
そして、僕は再び謁見の間に戻って来た。
「――なっ!?」
「キャー!」
僕の姿は頭にはマモォール鳥の姿をモチーフにしたヘッドギア。上半身裸に両手にはグローブ。さらにグローブには酒の入ったヒョウタンを持ち、長めのボクサートランクス。勿論、足は素足。完璧なエムタイと酔拳の混合スタイルである。
「アイスキー皇太子、ユリアラ殿。失礼な姿で申し訳ないが、これが僕の戦闘スタイルだ!」
僕はそう言って、ファイティングポーズを取る。
「アイスキー皇太子。準備は良いかい?」
「ああ、いつでも構わない」
「分かった。スタッフゥ~、決闘の宣言と開始の合図をしてくれ」
「では、私が」
名乗り出たのはギョシン司令官だった。
「これよりフロンガスター王国王太子、アレク・ガルラ・フラスターとグランプロス帝国皇太子アイスキー・アール・デレモントの決闘を始める」
謁見の間の空気は緊張に包まれた。この時、僕はこの場の空気をブチ壊すミレーユ・デストロイヤーが居ないことに感謝していた。
「はじめ!」
右手に長剣を持つアイスキーに対して、僕は大胆にも顔を上に向け、口を大きく開き、ヒョウタンから口へ、滝壷に吸い込まれる水のように豪快に酒を流し込むという行動をやってのけた。
「――!?」
アイスキーも僕の行動に意表を突かれたのか真顔になっていた。
僕はフラフラと千鳥足になりながら、アイスキーに近付いた。その瞬間。
「チェストォーーーー!!」
アイスキーは僕を酒に酔った酔っ払いだと判断したのか、勢い良く長剣を振り下ろした。
――アイスキー…… 彼も実は転生した薩摩隼人だったのか!? もし、ユリアラが絡んでいなかったら、最高の親友になれたかも知れない。僕も一人の薩摩隼人に憧れを抱く者として、この決闘は非常に残念だと感じていた……
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