第104話 哀れなBBA
母上を先頭に城門にたどり着いた狂乱鬼婦人会。敵兵も今、何が起こっているのか理解できずにドン引きしている。
「副会長班は城壁から! 私の班は城門から突撃を敢行します。よろしいわね?」
「「「ハッ! 会長のみ心のままに!」」」
母上の檄を飛ばし、それに嬉々として答える狂乱鬼婦人会の皆様。
バッキーさん率いる副会長班は城壁の前に立つと、そのまま城壁を登り始めた。
――ロッククライミングを始めただと!? いや、確かに城壁を登るのは可能かもしれないが、指やつま先を掛ける場所など限られているはず。
バッキーさん達が城壁を登る度にポロポロと城壁の破片が落ちてくる。良く見ると……
狂乱鬼婦人会の面々は硬い城壁をまるで豆腐に指を突き刺し。さらに、つま先をめり込ませて、城壁を登って行く。人間の出来る範囲を軽く凌駕している。
――ま、まるで、神の意思に逆らう行為だ! あのご婦人方は悪魔の化身かバケモノそのものなのか?
少数の敵兵もビビリ散らかしながらも、一応対抗しようとしていた。
城壁を蜘蛛のように登り来る、ヤベェ集団に恐れ多くも弓矢を放とうとしている。敵ながら、なんと命知らずな事を。と見守っていると、荒くれ者が一般市民に因縁をつけるかのように、バッキーさん達は『ギロリ』と敵兵にメンチを切ってくる。
さすがの敵兵もその野獣のような目に、命の危険を感じたのか、手に持っていた弓を落とし、悲鳴を上げながら逃げていった。
一方、母上達の班は……
普通に城門を壊し、何事もなかったように普通に城門内へ入って行った。
――ヤベェぞ! マジでヤバすぎる。 今の僕には、これ以上のヤバさを伝える言葉がみつからない。
僕達、第一軍を母上達に続いて城門を潜り抜ける。
そこには、狂乱鬼婦人会の面々が敵兵に対して、容赦のない制裁を加えていた。
――こ、この世に…… 神は居ないのか…… これ程の虐殺行為は見たことが無い。
一般市民だろうか。2メートルを遥かに越える筋肉質の老婆が弱々しく、母上に近付こうとしていた。
「ど、どうか。命ばかりはお助け下さい。私には病弱な息子と孫がおります。何卒、命ばかりは……」
そんな老婆の言葉に、母上は容赦なく、
『ゴンッ』 『ビューン』 『ドカッドカッ』
老婆に延髄蹴りを入れる。老婆は吹き飛び、建物の壁に頭をめり込ませた。
僕が老婆へ駆け寄ると、首が有らぬ方向に曲がり、すでに事切れていた。
「母上! これ以上の残虐行為はお止めください! 一般市民に手を掛けるとはどういう事ですか!」
僕はあまりのことに激情し、母上を非難した。
それに対し、母上は
「そんなデカイBBAが、どこの世界にいるのよ。どう考えても便衣兵でしょ」
「――確かに……」
無慈悲にも母上はあっさりと答えた。
「アレク。城に急ぐわよ」
母上はそう言って、男性は勿論。女子供、老人にいたるあらゆる生命体にワンパンを入れる。そして、崩れ落ちるように横たわる生命体に、さすがの僕でも、これは無いわ。と感じ、母上を止めるように促す。
「母上! 一般市民になんて事を…… さすがに女子供。老人。ニャンコ様まで手を掛けるとは、そこまでする必要がどこにあるのですか! これ以上はお止めください!」
「峰打ちよ。殺してなんかしていないわ。これからケーリンネガー王国の王族を族滅させるんだもん。市民には、その残酷な風景を見せるわけにはいかないでしょ。だから怖い思いをさせないように気絶させたのよ」
母上は一般市民にあれだけの暴力行為を行っておいて、まるで一般市民を自分が守っているかのような口調で、全く悪びれることなく答えた。
――ダ、ダメだ。この人…… カルイ副司令が言っていた事は正しかった。この場に居ないカルイ副司令が羨ましい……
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