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第101話 第八感

カルイ副司令官は顔を真っ青にしながら震え始めた。


「カルイ副司令。一体何が来たと言うのだ」


「……………………」


カルイ副司令官は何も答えない。そして、何かを恐れるように、その場から離れて行った。否応なしに、僕の第八感が警報を告げる。


第八感とは、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の五感に加えて、第6感の直感、第七感の霊感。その先にある第八感は…… 究極の災厄『毒母(オカン)』。


まさかと思い、僕は徐々に近付いて来る謎の建造物の一団を凝視する。


あの建造物に10数人の人間が乗っている。しかも最悪な事に、大勢の子供達にその建造物を引っ張らせているだと!? 頭には花笠を被らせ、みんな同じ青い法被(はっぴ)を着させている。それは(あた)かも古代エジプトでピラミッドの巨大な石を引っ張っている人達を想像させる。大の大人ならまだわかるが、いたいけな子供達を虐げるとは…… 児童虐待じゃないか!


さらに太鼓と笛の音が大きくなって行く。微かに子供達の掛け声が聞こえてくる。


()ッマレ ()ッマレ』



――えっ!? ()ッマレ ()ッマレだと? なんて物騒な掛け声なんだ! んっ!? ()ッテマレ? どこかで聞いた、このフレーズ。


お、思い出したぞ! 前世で青森県五所川○市の立佞○多(たちね○た)を見に行った時の立佞武○(たちねぶ〇)の掛け声じゃねぇか! 


その掛け声に気が付くと、子供達の声がもの凄く、元気で楽しそうに聞こえる。まるでお祭りを楽しむように。


「あ、あれは!?」


暫くすると、建造物の全容が明らかになった。


「山車だ! ユネスコ無形文化遺産に登録され、日本一豪華絢爛な山車と言われている。青森県八○市で行われている三社大○の山車じゃねぇかよ! どこでその山車を制作したんだ? しかも山車の上に武者とか、歌舞伎とか、昔ばなしのキャラの人形が乗っているはずなのに、なぜ人間が乗っている?」


僕が驚きマジマジと山車を眺めていると、ある人物の姿を確認した。


「母上? どうして主役と呼ばれる人形の位置に母上が居るんだ? それに母上だけじゃない。サンペータ、ルブラン、マリック、ドールの母親まで山車に乗っているぞ? 顔馴染みの貴婦人から記憶に無い婦人まで人形の代わりに山車に乗っているだと」


説明しよう。三社大祭での山車の掟として、最上段中央に存在感をバリバリ主張し、鎮座する人形の事を主役という。



――どうして神聖で、もっとも人々から崇拝されている。主役の位置に母上がこれでもかと豪華なドレスに身を包み、モデル並みのポーズをキメて鎮座されているのかわからない。



母上の存在を確認した直後、子供達の掛け声と太鼓、笛の音色が変わった。


『ヨ―イ、ヨーイ、ヨイサーヨイサ、ヨイサーノセー、ア()ーレ、()()()レー、もう1つおまけに、()()()()レー!』



――三社大○の山車の掛け声じゃないか! 狂ってる。完全に狂ってる。ヤベェとかのレベルじゃねぇぞ! 先ほどの立○武多(たち〇ぶた)の掛け声より、より一層、物騒になっているじゃないか! なんだよ。この殺伐した掛け声は! 子供達に言わせる掛け声じゃないだろ!



そして、ようやく僕の目の前で山車が止まった。


最上段から母上が華麗に飛び降りる。つかつかと僕の目の前まで近付くと、


『ビタンッ』


おもいッきり気合いの入ったビンタを喰らった…… 僕はその場で崩れ落ちる。


「これくらいの事で城を落とせないとは、なんとも情けない息子だこと。恥を知りなさい恥を!」


母上が鬼の形相で睨む。


「まあまあ会長。ここは落ち着いて。情けない男共には、この戦場は任せておけないわ。ここは私達が男共に真の正義(暴力)とは何かを知らしめてやりましょう」


ドールの母親まで狂気じみた事を言い始めた。


「そうね。真の正義(暴力)とは何かを伝授するのには、ちょうど良い機会ね。では副会長。口上を頼むわよ」


「はい。会長」


どこからどう見ても貴族とは思えない、見知らぬ婦人が会長でもある母上に返事をしていた。


「母上。良いところを邪魔するようで、申し訳ありません。副会長さんにこれまでお会いしたことがないのですが?」


恐る恐る母上に聞いてみた。


「副会長のバッキーさんね。平民の出だけど相当強いわよ。王宮に温室ドームがあるでしょ?」


「ええ。確か貴重な植物とかを温室で、育ててますよね」


母上の質問に、なぜ温室ドームの話が出るのかと疑問に感じながら答える。


「あの温室ドームには地下格闘技場があって、彼女はそこのチャンピオンなの」


「はぁい? 温室ドームの下に地下格闘技場? そんな物があったんですか!」


「ええ。普通にあるわよ。月一回地下格闘技場で狂乱鬼婦人会主催の格闘技大会が開かれているわ」


「そ、そんな…… そんな話を聞いたこと無いですよっ!」


「知らなくて当たり前よ。会員でなくては知らない事ですから」


「ち、ち、父上は知っているんですか?」


「あの人、公認の狂乱鬼婦人会だから知ってるわよ。『認めさせた』というのが正しいのかしら」



――実力で父上を黙らせた。ということか? な、なんてこった…… 母上、ヤバすぎる。その行動そのものかヤバすぎる。



お読みいただき誠にありがとうございます。

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