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「お前の言いたいことは理解はした。だがそれはできん」


「何故です。自分でいうのもなんですが、私モテるんですよ。卒業式でも10人に告白されました。顔立ちもそれなりに整っていると言われます。何が不満なんですか。は、そういえば小学生の頃、私の友達にすごく親切でしたよね。もしかしてロリコ……」


「俺は大人の女性が大好きです!誤解を招く発言は止めて下さい!」


よかった。ファミレスに行かなくてよかった。社会的に死ぬとこだった。


「じゃあなんでこんな上玉な据え膳、召し上がらないんですか。処女だから病気の心配もなし。後腐れなしのワンナイトラブ。あの怖そうな彼女さんには絶対秘密厳守。あ、もしかして彼女さんに申し訳ないとかですか。大丈夫、大丈夫。気持ちはゼロなんで浮気じゃないです。単なる医療行為と思って下さい」


どこのスケコマシの台詞だよ。


「彼女のこと知っているのか。残念ながらあいつとは3か月前に別れたよ。もう関係ない。それよりお前、『後腐れなしのワンナイトラブ』ってどういうことだ。俺と結婚したいんじゃなかったのか」


「結婚?誰と誰が?」


「お前と俺が」


「ああ、ごめんなさい。また言葉足らずでしたね。私が欲しいのは樹さんの子供。結婚とか考えていません。私一人で育てるつもりですので。認知もしなくていいですよ」


「シングルマザーを否定する気は毛頭ないが、世の中甘くみてないか。子育ては遊び感覚でするもんじゃない。子供の人生に責任を持てるのか」


人生の先輩として、社会の厳しさを教えてやらねば。びしっと。


「それについては目途が立っています。中学の時から語学の勉強して、今フリーランスで翻訳の仕事をしているんです。在宅で仕事が出来るので、子育て問題無し。大学は敢えて機械工学科にしましたが、それを翻訳に生かせば食いっぱぐれも無し。現段階でも蓄えがあるので、投資に廻しているんですよ」


18歳で投資だと。社会人2年目の俺は車のローンでいっぱいいっぱいなのに。……なんか負けた。



「樹さん『俺に出来る事ならなんでもシテあげる』と言ってくれましたよね。私は抱く気にならない程魅力がないのですか。どうすれば私を抱いてくれるのですか。教えて下さい……」


その言い方は反則だ。こっちはどんだけ理性を総動員していると思ってやがる。必死で第二形態変化を阻止してるんだぞ。


「君は、まだ18だ。人生の進む道を絞り込むのは、早すぎる。巻き戻しは効かないんだ。そんな無謀な真似、俺は後押し出来ない」


「これは昨日今日決めた決断じゃないんです。6年間、必死で考えました。これでも樹さんの世間体にも、精一杯配慮したんですよ。本当は中学生の時に抱いてもらいたかったんですけど、流石にそれは社会的に問題がありまして。高校生でも少し問題があったし、初めての彼女さんと別れてもと思って自重しました。樹さんが社会人になって遠距離恋愛で、ワンチャンいけるかなって、このタイミングでした。まさか別れているとは。さあ、なんの障害もありません。 カモナ ベイビー!」


ベイビーじゃねえよ、この野郎!

あぶねー。過去の俺、本当に崖っぷちを歩いていたんだな。



「とにかく、俺はお前を抱かない。これはお前がどうこう、周囲がどうこうじゃない。俺の内面の問題だ」


そうとも、これは世間体がとか、自分の将来への打算とかではない。

幼い少女の罪の意識に乗っかって幸せを築く。そんな真似なんかしたくない。

俺が自分に胸をはって生きられるかどうかの問題だ。


つぐみは身じろぎもせず俺を見つめた。冷たい火花が散る。

仕方がない。主義思想が違うのだ、冷戦下の米ソのように。



永遠とも思われる時間のあと、つぐみはふっと息をもらした。


「わかりました。樹さんの考えは理解しました。人にはそれぞれ譲れない想いはあります。けれど、それは私も同じです。肝要なのは、それぞれの想いにどう折り合いをつけるかじゃないでしょうか。今日の所はこれで帰ります。それではまた」


静かに嵐は去っていった。俺はぐったりとソファーで四肢を伸ばし、意識が遠のくのを感じた。

本日最後の投稿です。

ブックマーク頂いた方、ありがとうございます。

本当に嬉しかったです。これで明日も頑張れます。

「うちのお嬢様は最強の恋愛戦闘民族サツマナデシコ

「スノーホワイトは増殖する」

こちらもよろしければ見てください。


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