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ネクストステージ

明けましておめでとうございます。

今年もこの作品を可愛がってください。


第二章スタートです。お楽しみください。

新たな日々が始まった。

社会人になって、初めて年度が変わったというのもある。これまで一番の新人だったのが、後輩が出来るのだ。楽しみである。

だがそれ以上に俺の心を躍らせるのが、つぐみとの新たな日々である。

これまでお互いに大切に想い、それでも上手くかみ合わなかったのが、結実したのだ。

いとしい。

この想いを大切に育てていこう。




慣れ親しんだオフィスに着く。配属部署の変更はない。


「新入社員、かわいい子いるかな?」


隣で小鳥遊が脳天気な声をあげる。

平和だね。




神代(かみしろ) 樹さん、大至急社長室に来てください!」


青い顔をした痩身の40代の男が、オフィスに飛び込んで来て叫んだ。見たことがある。社長秘書として巡回に付き添っていた事が何回かあった。

何事だ。俺が何かミスをしたとしても、呼び出しするのは人事部か経理部だろう。社長室?何事だ。


「とにかく急いで」


戸惑う俺の腕を掴み、秘書は社長室へと連れていく。




「失礼します!」


秘書はノックもせずに社長室のドアを開ける。

おいおい、こんな開け方をするなんて。いくら不調法な俺でもこんな真似はしないぞ。よっぽど追い込まれているんだな。


「おお!待っていたぞ、君が神代くんか。頼む、わが社の未来は君の肩にかかっている!」


部屋にはいると待ちかねていた社長が飛び出してきて、俺の手を強く握り、潤んだ瞳で見つめてくる。やめてくれ。60代の爺さんにこんな真似されても、嬉しくも何ともない。


社長と秘書、熱いパトスを放出する一団とは別に、奥に絶対零度の冷たい視線を投げかける一団がいた。




「一橋さん、元社長としての貴方の仕事はここまでです。退出してください」


「いや、しかし私には元社長としてこの成り行きを見届ける責務が……」


「二度は言いません、退出を。これから先は最重要事項。貴方はそれを聞く立場にありません」


元社長?どういうことだ。政変でもあったのか。この会社には激しい派閥争いは無かったはずだ。

疑問が浮かぶ俺は周りを見渡す。奥に5人、静かに佇む人たちがいた。その中の一人に俺は目を奪われる。

冷徹な声で元社長を叱責する女性。俺は彼女の名を知っている。


西條(さいじょう) 奈那子(ななこ)』それが彼女の名前。

つぐみとのことで悩む俺に、ひとつの道しるべを示した女性だ。






俺を残し元社長一行は退出していった。「頼む……」と縋るような元社長の言葉を残し。入社二年目のペーペーに何をさせるんだ。


「まったく、一体なんでこんな事に。……そんな目で見ないでくれる。言っとくけどこっちは巻き込まれた方、被害者みたいなもんなんだからね」


投げやりに言う西條は、少しあの夜の彼女に戻っていた。


「まず現状を説明するわ。わがF社はこの会社を買収しました。子会社化して系列会社に再編したわ。言っとくけどこんな会社、子会社化してもわが社には何のメリットもない。私たちの目的はあなたよ、神代 樹。あなたを手に入れるためだけに、私たちはこの会社を買収したの!」


なんじゃそれは。どこかのご令嬢が俺を見初めて暴走するとかのラブコメが始まるのか。


「これから先は私の口からは言えない……。比丘尼(びくに)さま!」


これまでの蓮っ葉(はすっぱ)な口調を改め、神妙な声で後ろの一団に呼びかける。一人の女性が抜け出してくる。

いや、女性というのは似つかわしくない。少女だ。どう見ても15歳くらいの少女だ。

小さい顔であった。花を溶かしたような、鮮やかなぼやけた顔色をしていた。その大きな瞳は黒から赤、赤から青と目まぐるしく変わっているかのように見えた。こんな人間、見たことがなかった。


「おぬしが神代 樹か」


重く、高い声が響いた。


「……なるほどの。直に視てわかった。これぞ儂が永年追い求めていたもの……。永かった。ついに、ついに……」


なんか勝手に感極まっている。なにこれ、こわい。


「一体なんですか、説明してください。どうして俺がこんな目に遭ってるんですか!」


俺は当然の疑問をぶつける。


「ふむ、どうやらお主は自覚しておらんようじゃな、哀れな。……よかろう、言開きして進ぜよう。心して聞け」


少女はふんぞり返って偉そうに言う。


「お主6年前、原因不明の高熱にうなされたことがあったな。三日三晩高熱が続き、その後噓のように回復した」


何故こいつがそんな事を知っている。


「お主も薄々は感じているのかもしれん。……それは、怪異の仕業じゃ。お主の隣に住む少女に憑りつき、分離した半身がお主に憑りついたのじゃ。その怪異はこの六年、そのまま眠ったままじゃった。だが今、そやつは一つに合体し、復活しようとしている。儂らはそれを何としても防がなければならぬ。そのために儂らはここに来た。そやつが復活すれば、この世は黒き霧に覆われて人の身は朽ち、人の心は暗黒の闇に囚われて壊れていくじゃろう。そのものの名を、(いにしえ)より人はこう呼ぶ……『土蜘蛛(つちぐも)』と」






ファンタジーかよ!これラブコメじゃなかったのかよ。


現実世界〔恋愛〕です。ローファンタジー〔ファンタジー〕ではありません。

そもそもこの話の大元となる「霊に憑りつかれ、隣のお兄さんに押し付け、高熱が出て子供が出来るか思い悩む」というエピソード、これは知人の実体験に基づく実話です。したがってこれは現実世界〔恋愛〕です。(キリッ)

強引な理屈ですが、ご容赦ください。


第二章スタートしました。投稿ペースは少しゆっくりになると思います。

同時投稿している「スノーホワイトは増殖する」を執筆するのに少し力を入れたいからです。

この「彼女は拗らせた恋をする」にかまけて投稿をさぼり、ほったらかしにしていました。

どちらも自分にとって可愛い作品です。出来れば「スノーホワイトは増殖する」もみてください。


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