長生き雲の物語
ふわふわした雲。
真っ白な雲。
雲は空に浮かぶ生き物だ。
ぷかぷかと風にのって、各地を漂って生きている。
まっさらな青い空の中、一つだけ漂うのもいいし、たくさんの雲と一緒に漂うのもいい。
一つが好きな雲もいるし、皆と一緒にいるのが好きな雲もいるから、それぞれの雲によって色々個性が違う。
そんな雲は、今日も各地でぷかぷかと浮かんでいる。
遙か下、地面の上で生活する人々や動物、モンスター達を眺めながら、ぷかぷか、ゆったり過ごしている。
雲の時間は多くの人や動物達とは違って、おだやかに流れていく。
だから雲は、とても長い時間の中で起きた事を、一瞬の出来事の様に感じていた。
小さな王子が長い年月をかけて王様になるのを、またたきするような間に感じたり。
小さな苗がたくさんの葉っぱをつけた大樹になるのを、あくびをする間に感じたりする。
そのため雲は、色んな他の生き物より多くの出来事を知っていた。
たまに世界の危機が訪れたりして、魔王の倒し方を知りたい勇者や、世界環境の保護の仕方をしりたい賢者が現れたりすると、その方法を教えてあげたりしている。
そうしていると、いつの間にか、「何か知りたい事があれば雲にきけばいい」という話が広まった。
その話は文明が発達して、魔法やら超能力が消え去った代わりに、科学の力がのびてきた頃にも残っていた。
分からない事を知りたい時、頭のいい人に尋ねる時のたとえとして、「何か知りたい事があれば長生き雲に聞けばいい」と活用されるようになった。
どんな時代になっても、のんびりした時間感覚を持っている雲は、生き続けていく。
やがて科学の時代が過ぎ去って、別の何かの時代になったとしても、ずっとずっと生き続けていく。




