表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天の御言- てんのみこと -  作者: まあしゃ
7/16

- 第1章 - 祈祷師5

「これで良いか?!」


『ああ、そのままからくり車を走らせておけ!』


「自転車な!」


『わかっとる!』


ハクは半目で俺を睨みつつも、護符を咥え取った。

余計なことを言うなと咎められた気がしたが、条件反射だったんだ。気にすんな。


俺の表情を見てまた心底嫌そうな眼差しを向けられたが、ハクは護符を咥えたまま自身の身体を発光させた。


すると、見る見るうちに護符が拡大していく。


「すっげ…。」


そうして2倍程に大きくなった護符を確認するとハクは小さく頷いた。

2枚の内の1枚を俺の胸に貼り付けて、残りのもう1枚を自身の背中に同様に貼り付ける。

即座に俺とハクの体が淡い緑色の光に包まれ、自転車自体も覆い尽くした。


『よし、このまま切り抜けるぞ!


今の我らには攻撃の術がない。なんとしても例の祠に辿り着かねばならん!』


「おう!」


護符の効果のおかげか、遠方に見慣れた景色が確認できる。

首のもげたカカシに安心感を覚える日が来るなんて、思いもしなかった…。


「あ、でもさ。もし例の祠がハズレだったらどうする?」


嫌な予感はどうしてこうも次から次に湧き出て来るのか。


もし今を切り抜けられたとしても、例の祠がハズレだったら?護符の効果が切れたら?

今の状況こそ、目的地に仕向けるような罠だったとしたら?


乾いていた両手が、また湿り始める。


『安心せい。かの山中からは懐かしい匂いがする。

大丈夫、恐らく味方だ。それも信頼できるな!』


「そうか、良かった!」


眉間の皺が無くなったハクを見て、ペダルを漕ぐ足が軽くなった気がした。


「よし、スピードを上げるぞ!」




__________________________________________________

_____________________________


かれこれ2時間は自転車を走らせていた感覚だ。本来であれば20分足らずで辿り着けるこの“ゴリラ山”。

敵の術中のせいか、護符をもってしても到着時間が大幅に遅れてしまった。


俺は麓ふもとに着くなり自転車を降り、そのまま崩れ落ちた。足が限界だ。息も乱れまくり正常な呼吸ができない。


「ハァ、ハァ…逃げ切った…のか?」


痙攣を起こしてしまった両足に鞭打ち、なんとかうつ伏せの状態から仰向けの体制に変えた。


月は雲に隠れているのか、途方もない暗闇が眼前に広がっている。星1つすらない。

俺は護符が入っているもう反対のポケットから、持参してきた懐中電灯を取り出した。


周囲を念入りに照らし当てる。


『ふむ、大丈夫そうじゃな。

この山の加護のおかげじゃろう。』


先に見回りに出かけていたハクが戻ってきた。


地面を駆けると草木に紛れて見失う懸念をしてしまったが、杞憂だったようだ。

宙に浮くその姿は、改めて非現実的な存在だと認識させられる。


闇夜の中で薄らと発光しているため、ちょっと便利だなと思ってしまった。


『歩けそうか?』


俺のだらしない格好を見て、ハクは怪訝そうな声を掛ける。

邪な考えを見透かされたようで内心驚いた。


「っく、もう少し待ってくれ。足に力が入らない。」


小刻みに笑う両足。徐々に落ち着き始めているが腰から下の感覚が無い。


先ほど一瞬感じた“死”の影響だろうか。今になって恐怖がじわじわと押し寄せてきたせいで、どうやら腰が抜けてしまったらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ