- 第1章 - 祈祷師
「ぐ、具体的にはこれから俺はどうすれば良いんだ?
それにお前は何者なんだ?!」
“一般人を捨てる”ことへの恐怖で頭が痛い。だが同時に、好奇心が無いわけでもない。
先ほどまで読んでいたバトル系漫画の影響かも知れないが…。
『ふむ。わしの名は長いから、、あーよし、ハクで良い。』
消しゴムサイズの白犬は快く頷くと、ふわふわの胸毛をなびかせてふんと鼻を鳴らした。
『今は不完全でな、ちとこのような姿をしているがーーーー』
「ちんちくりんな。」
『違うわ馬鹿もの!これでも由緒あるーーー』
「わ、わかったわかった。そういうのは後でいいから、この状況を説明してくれ。」
吹っ掛けてしまったのは悪かったが、何だか長話をされそうな気がした。
昔々あるところに…と似たような調子だっため思わず遮ってしまう。
それよりもなぜこの状況になったのか。話出しからすると希望薄かも知れないが、一刻も早く原因が知りたい。
一般人を捨てろだなんてあまりにも突然だし、非現実的すぎる。
「一体どう言うことなんだよ?」
俺の問い掛けに、白犬はピクリと片眉を動かした。
会話を遮られた事に気を悪くしたのかと思ったが、話の切り出し方を迷っているようにも見える。
『ふむ。お主、“祈禱師”と言う者を知っておるか?』
「きとうし?それって神社で厄除けをしてくれるあの?」
『まあ、似た様な者だな。耳慣れなくとも無理はない。
もう現代には重要ではない生業ゆえな。』
「昔は人気職業だったってことか?」
『まあそうさな。ただ祈るだけでは無く、祈りを媒体とし災厄を祓う者のことを指す。
今から約500年前では良く知られておった。』
「マジか…。だとすると、その事実を知っているお前は相当長生きだったりするのか?」
『ふむ、そうなるな。』
昔を懐かしむように、白犬は目を細めどこか遠くを眺めた。
なんとも信じ難い話だが、先程超常現象を見せられたのだ。
俺は一応、半信半疑で頷いてみる。
『本来なら500年前のあの日以降、再び祈禱師が復活することは無かったんじゃ。
しかし、そうも行かんくなった。』
またもしわくちゃな表情をこちらに向けてくる。消しゴム犬風の、“深刻な表情”なのだろう。
俺からすれば噴き出しレベルの変顔なのだが。
しかしこの短時間で察した。またも心臓の音がうるさくなる。
「まさか、その祈禱師が復活せざるを得ない状況が、今起こったと…?」
どうかこれ以上、嫌な展開にならないでくれ。
『察しが早くて助かる。左様、つまりそう言うことだ。』
白犬はその小さな目をこちらに向けると、ニカっと歯を見せて笑った。
「お主には今から祈禱師になってもらう。安心せい、わしがしっかりサポートしてやる!」
嫌な予感はどうも立て続けに起こるらしい。今年厄年だったかな。
視線を逸らしても真っ二つに折られたベットが視界に入ってくるから、否応でも今の状況を飲み込むしかなさそうだ。
「わ、わかったよ。どの道、その選択肢しかないんだろ。」
一般人を捨てて“祈祷師”になる。
いまだに現実味がないが、もうなるようになれだ。
「やってやるよ、その祈祷師とやらに…!」




