表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天の御言- てんのみこと -  作者: まあしゃ
14/16

- 第1章 - 祈祷師12

さかのぼること10年前、確か小学校低学年だった時だろうか。


ゴリラ山は立ち入り禁止区域に指定されておらず、山道まで手入れが施されていたため当時は登山スポットとして知られていた。

近隣小学校の遠足先にも選ばれていたくらいだから、それなりに賑わっていたと思う。

当時の俺も、初めての遠足行事でこの山を訪れた気がする。


しかしその道中、俺だけ迷子になったのだ。


今思えば鞍馬の導きで神域に招かれたのだろうと推測できるが、クラスメイトと並んで歩いていたはずの景色が一変。

突然、俺一人きりの世界になってしまった。


けれど不思議と恐怖心は湧かなかった。心地よい鳥のさえずりりと、柔らかな風。それによってゆっくりと揺れる木々達。

まるで自分が何者かに歓迎されているような気がして高揚した。


そうして足を止めずに進んだ先に、祠を発見したのだ。

浮世離れした美しさにただただ感動した記憶を思い出した。


そして若気の至というやつか…あろう事か俺は礼を通さず無作法に祠の扉に手を掛けた。

そのまま鞍馬の御神体をフィギア感覚で掴み取り、なんてシンプルなんだと…俺の手で格好良くしてやると…。

リュックサックに入れていた筆箱からマジックペンを取り出して…。

ああ、満足気に微笑むチビ時代の俺が目に浮かぶ。



「…大変申し訳ございませんでした。」


『全くじゃ!どこのどいつに御神体に落書きする馬鹿がおるか!

居ったなすぐ側に馬鹿もんが!』


「あー五月蝿いなあ!消しゴム犬!」


プチトマトのように全身真っ赤にして怒るハク。

だが反対に鞍馬は冷静だ。


『まあまあ、こうしてお会いできましたゆえ。私は気にしておりませんよ。

…最も落書き以降ずっと幽霊扱いを受けてはおりましたが?』


あれ、冷静に見えていたが、実は相当抑えていたり?

鞍馬の背後に見えないはずの炎が燃えているのは気のせいだろうか。

羽毛で気付くのが遅れたが、薄らと見えるのは青筋だ。

やばい。鞍馬のようなタイプを怒らせると取り返しが付かなくなる気がする。


聞けば、祈祷師の直系が神域に持ち込んだ現世の物=マジックペンを使用した事がいけなかったらしい。

御神体とは、神仏が現世に居る事を保つための、言わば媒介を担うもの。

神域を介さずに落書きするだけであれば、何も影響は無いし落書きをされた箇所自体も経年変化で薄くなり、やがては消えて無くなるのだとか。

まあ間違いなく罰当たりな事には違いないが。


しかし神域を介してしまった事で落書きされた箇所のみが現世に写されてしまい、加えて祈祷師の直系にあたる俺が直接手を施した事によって、そう簡単に消えない仕組みが出来上がってしまったと言うのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ