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覚醒のオーバーロード  作者: Haru
第一章 小さき英雄(リトルブレイブ)編
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小さな英雄(リトルブレイブ)編 CHAPTER Ⅱ. 5

久々の投稿ですがよろしくお願いします。

5.


◆◆◆◆◆


暗がりに浮かぶ無数の光の球体がまるで星々のように眩く輝き、この亜空間を照らしている。

瞳に映るこの景色は自分をまるで宇宙にでも連れ出したかのように錯覚させる。

その薄暗がりの奥、深淵のごとく深い闇から一つの人影が近づいてくるのが見えた。

我らが主、私が仕えるただ一人のお方。

「彼らの様子は、どうかな?」

「先の戦闘では、武装展開を用いていました。本当にこのままで良いのでしょうか」

「構わないさ。これもまた、ひとつの実験だ。」

「・・・実験、ですか。しかし、未だに信じられません。まさか、彼が生きていたとは」

「伊達に、死地を生き延びてきた訳では無いだろう。ここからどうなるか、見物だよ」

「・・・少し、嬉しそうですね?」

「そう見えるかい?アリエス」

──アリエス。それが私に与えられた名だ。

私が最初に意識を持った時、我が主に初めてお会いした日、私に授けられたもの。

私は主の剣であり盾であり、そして手足だ。

「えぇ。少し頬が緩んでおられますから」

彼は自分の頬を擦りながらもどこか満足気に微笑んでみせた。

だが、私は知っている。

その表情は、彼が作り出して見せたものだということを。

彼の偽りのこころによってもたらされていることを。

彼が興味があるものしか彼の心を動かすことは出来ない。それが例え、彼を慕うものの言葉であろうとも。

私は、知っている。

だが、この感情が何なのかは、まだ知らない。


──いや、違う。


今はそんなことを考えている場合ではない。

私は与えられた使命を全うするだけ。

それが私の存在理由なのだから。

「・・・白彌瑞月。そして・・・三崎大地」


白金に輝く髪を纏め上げ、私は仮面を被る。

黒いローブに身を包み、深くフードを下ろした。


◆◆◆◆◆


僕は一人、いつもの天文台に来ていた。

いつもこの天文台は人気がない。黒ずんで薄暗い灯りをともす照明が、ますますこの施設の雰囲気を悪くさせる。

施設の使用料金を受付で払い、僕はプラネタリウムへと向かった。

この施設のプラネタリウムは小規模だけど星々を天井いっぱいに写し出すあの空間が僕は大好きだ。

本当なら白彌くんも誘ってここに来たかった。先日の一件以来、彼とは距離が生まれたように感じる。僕が謝るべきなのかもしれないけれど、どうにもその踏ん切りがつかないでいる。

ホールに入り座席に着こうと辺りを見回していると見知った顔が目に入った。

「やぁ、三崎大地。君、もしかしてサボりかい?今は授業中だったはずだが」

黒いジャケットにハットという出で立ちで叢雲先生が座席にいた。

「・・・あ、えっと、その」

思わぬ邂逅に言葉を出せないでいると叢雲先生はそれが可笑しかったのか指で口を押さえるとクックっと笑った。

「いやぁ、ごめんな。ほら、ここ座れよ。それともこんなおっさんの隣は嫌かい?」

「い、いえ。そんなことは」

叢雲先生の右隣の座席に座る。

「ここはいい。気分が落ち着く」

「え?・・・そうですね。僕もです」

というか、僕がここにいるように叢雲先生も学校サボっているのではないだろうか。仕事してるのかこの人。などと思っているとプラネタリウムの上映が始まった。

この日の演目は、春夏秋冬それぞれの季節に見られる星座を解説したものだった。

そこにはこれまで遭遇した二体のオーバーロードのモチーフとなった星座もあった。

春の北天に浮かぶ、星座としては最近形作られ神話と言えるものは特にない小星座。やまねこ座──リンクス。

そして、春の南天にある伝説の聖獣を象った一角獣座──モノケロース。

ユニコーンと呼んだほうがわかりやすいかもしれない。伝承や神話は多く語り継がれ、処女のひざにのる姿は有名だ。

その角は万病に効く妙薬ともされる───。


・・・もし、オーバーロードがその伝承に沿った行動や能力を持つのだとしたら・・・?


ふと、そんな考えが浮かんだ。

なぜ、あのオーバーロードは陸上部員のみを襲い、それも脚を狙うのか・・・。

万病に効く・・・治療・・・脚・・・処女のひざ・・・陸上・・・部。


何かが繋がったような気がした。

そして昨日までの白彌くんの態度。

彼は言った。

たとえお前の身内でも容赦はしない、と。


白彌くんは本当のことを言っていた。

けれど、その理由までは完全に理解しているわけじゃないだろう。

この僕の予感が正しければ、昊姉ぇはもしかしたら・・・。


いつの間にか、演目は終了していた。

隣にいた叢雲先生も、すでに退席していた。

都合がいい。今ならまだ間に合うかもしれない。

僕は急いで席を立ち、昊姉ぇのいる病院へと向かった。

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