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覚醒のオーバーロード  作者: Haru
第二章 時の支配者(クロック・ルーラー)編
18/29

CHAPTER Ⅰ.星読みの賢者-7

7.


「ん・・・・・・あ、れ?ここは・・・・・・」そう言って女子生徒は目を覚ました。

保健室の壁にかかる時計の針は16時35分を指し、すっかり放課後だった。

「目が覚めたようだな、気分はどうだ?」

「えっあれ・・・・・・?白彌瑞月・・・・・・くん?な、なんでここに」

さすがは噂の美少年転校生。初対面だと言うのにこの知名度だ。

「そ、そうだ。わたし、青木くんを呼び出してそれから・・・・・・。っ!青木くん、彼は無事なの!?」

青木とは恐らくあの男子生徒のことだろう。真っ先に心配するあたり恨み辛みで襲っていたわけでは無さそうだ。

「えっと、彼なら」

「やっと目が覚めたかよ。赤井」

そう言って隣のベッドから男子生徒が起き上がる。

白彌くんと比べるのは悪いと思うけど、それでも僕なんかよりは圧倒的イケメンに入るほうだろう。体育会系らしい体格も相まっておもわずしり込みしてしまいそうになる。つまり、僕の苦手なタイプだ。

「青木、くん。・・・・・・なさい、ごめん、なさい」

「いや、なんかよくわかんねえけどさ、俺も、すまなかった。でもお前の気持ちはすっげえ嬉しかったんだぜ?」

「ううん、私が・・・・・・私が自分のことしか考えてなかったから。本当にごめんなさい。こんな私じゃ、青木くんの隣にいる資格なんてないよ」

感情が溢れ出し女子生徒の頬を涙が伝う。憎悪を振り撒いていたあの姿を思えばまさに憑き物が落ちたという感じだった。

「ったく、ほんと何も分かってねえよお前。」

「え?」溢れる涙を両手で拭いながらきょとんとした顔をする。

「髪の毛・・・・・・悪かったな」

「・・・・・!あ、私の髪・・・・・・」

慌てて髪の毛に手をかけ自分の髪の変化に気がついたようだ。みるみる顔が青ざめていく。

コーマオーバーロードの影響下にあった彼女の毛髪は美しく長い艶やかなかつての姿を失い、耳辺りで不揃いに切られており、手ですけばいとも簡単にちぎれてしまいそうなほど脆くなっていた。

オーバーロードという過ぎた力の代償とはいえあまりにも惨い・・・・・・。

「俺がお前の綺麗な髪が好きだって、軽はずみに言っちまったからお前気に病んでたんだろ?もっと綺麗にならなきゃ、てさ」

「でも、私・・・・・・青木くんに振られて」

「振ってねぇよ。あの時は部活に専念したかったから今はまだ付き合えないってそう言ったんだ。むしろ俺は・・・・・・」「え?ええ?」なおも分からないというふうに驚きの声をあげる女子生徒の髪に手を近づけると「どんな姿になっても、たとえ丸坊主になっちまっても、もちろん今のお前も、どんな時も俺はお前が好きだ」

「あ、ああ、青木くん・・・・・・!」

そして二人は熱い抱擁を交わし口を近づけ・・・・・・「っん、んん!」と同席していた宮嶋先輩がわざとらしい咳払いをしてそれを止めてしまった。

なんともおアツい場面を目撃してしまったものだ。かくいう僕は途中、恥ずかしさから完全に目を逸らしてしまっていたんだけど。

「ところで赤井先輩。あなたは自分がどうなってここに運ばれたのか覚えていますか」

さすが白彌くんだ。聞くべき事をしっかり覚えている。

「え、と。ごめんなさいよく覚えてないの。なんだがそこだけ空白になっているみたいに」

「そうですか」

今回僕達はオーバーロードのコアが破壊されるのをきちんと確認している。やはり、コアが壊されるとオーバーロードを宿していた期間の記憶が曖昧、もしくは完全に消えてしまうようだ。

「あ!でも」と、女子生徒が思い出したようにぱっと顔を上げる。「記憶が曖昧になる直前のことなら、少しは覚えてる、かも?」

「!」

これは思わぬ収穫だ。もしかしたら一気にオーバーロード事件の謎が解けるかもしれない。

視界の端に時計の針が見えた。16時35分。夢中になると時間の経つのを忘れるとはよく言うものだ。まさか一分も時間が経っていないなんて。・・・・・・16時35分?

今度ははっきりと時間を見ようと時計へと振り向いた。16時45分────。そうか、見間違い・・・・・・ほっとしてみんなの方へと向き直る。

そこには誰もいなかった。

「え?みんなどこに・・・・・・」先程まで女子生徒が寝ていたベッドの上にはなにか書かれた紙が置かれていた。


我が挑戦に見事勝ち取って見せたこと賞賛しよう。

楽しんでいただけたかな?

月の王とその従者よ、また我の挑戦を受けてみよ。

我は星読みの賢者。


紙にはそう書かれていた。訳が分からない。暗号とかでは無いようだけど、何が目的だ?

「大地?まだここにいたのか。もう帰ろうぜ」

廊下から白彌くんが呼びかけてきた。ついさっきまで一緒にいたはずなのにいつの間に僕たちははぐれてしまっていたのだろう。いや、これではまるで僕だけが置いていかれた・・・・・?

時計の針は既に17時をまわっていた。


CHAPTER1. END

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