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覚醒のオーバーロード  作者: Haru
第二章 時の支配者(クロック・ルーラー)編
17/29

CHAPTER Ⅰ.星読みの賢者-6

6.


「だが相手は生身の人間だ。こんなケースは初めてだが、どうする?」

なおも慟哭をあげる空き教室は、さらに混沌とした状況になっていた。まさに蜘蛛の巣状態、いやここまでくればもはや蜘蛛の腹の中と言った具合だ。

僕は先ほど頭に響き渡った悲鳴と、その中に紛れた被害者たちの言葉を白彌くんに伝えた。

「僕に考えがある」

「考え?どうする気だ」

ルミナスアークを手に構え白彌くんを見やる。

「原理はわかんないけど、あいつはこのアークから放たれる光が苦手みたいなんだ。それを利用する」

「アークが・・・・・・!?」

「ここじゃどの道オーバーロード化は出来ない。あいつは僕が何とかするから白彌くんは外で準備していて欲しいんだ。たぶん、とどめはルナティクスじゃなきゃさせないから」

「わかった」

「道は僕が開ける。白彌くんならこの階から飛び降りても平気だよね?」

「ったく、無茶言うぜ。やってやる」

僕はアークを手に混沌渦巻く教室へと飛び込んだ。白彌くんが僕に続く。

教室の扉に足がかかると、一斉に髪の刃が迫ってくる。

頼む、上手くいってくれ!そう願い僕はアークを手に腕を前にかざす。

光が僕たちを包み髪の刃の猛攻を防ぐばかりか触れた刃が次々と霧散していく。髪の毛に見えてもやはりこれはオーバーロードを構成する物と同じなんだと確信した。

勢いづいた僕はさらに前へと進む。黒く蠢く髪の毛の波に裂け目が見えた。

「白彌くん!いまだ!」

僕の合図と共に白彌くんが駆け出す。一気に髪の波を掻き分け窓へと近づく。その勢いのまま、窓ガラスをぶち破り外へ飛び出した。壁沿いにある配管を掴み壁を滑り落ちる。まったくほんとに大した運動能力だ。

割れた窓から髪の刃が追撃を仕掛ける素振りを見せた。しかし窓へ触れようとした刃たちは外へは仕掛けずにいっせいに僕に狙いを定めた。動ける範囲でも設定されているのだろうか。でも今は好都合だ。

「ごめんなさい。あなたののことはよく知らないし何があったのかもやんわりとしか理解出来てません。それでも、望まない形で叶えられた願いに苦しむあなたを救いたいんです。だから─────」

ルミナスアークに願いを込める。助けたい想いを、自分の願望に変える。未だ微かな恐怖に震える足を諌め勢いよく飛び出す。

髪の刃はルミナスアークの光を脅威と判断したらしい教室に張り巡らされた髪の毛を一気に収束させ球体となって僕に立ちはだかる。

その光景はもはや髪の毛などではなく黒く渦巻く深淵そのものだった。

「それでも、僕はっ─────!」

アークを突き出す。眩い光が教室を白く染めあげる。


キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!


再びの絶叫が鼓膜を抜け頭に響く。

黒く蠢く髪の毛が一瞬女子生徒の体から離れたのを見逃さなかった。「そのまま出ていけぇぇぇえええ!!」さらに強くアークを突き出し髪の毛立ちを捉える。光はまるで髪の毛たちを包み込むように形を変えると僕はそれを割れた窓目掛けて外へ投げ出した。さながら大きなボールを放り投げるような動きになっていたと思うけど、僕の運動神経では上手くバランスを取れずそのままもつれるように床にへばってしまった。慌てて窓へ滑るように走る。

「白彌くん!今だ!!」

ルミナスアークの光が白彌くんに向かう。白彌くんは外で既に準備万端だった。

「ああ、あとは任せろ」


「「ライズアップ!アドベント!」」


白彌くんの体が白く巨大な姿へと変貌する。

ルナティクス・オーバーロード。白彌くんのもう一つの姿。

まだ日があるうちに見るのは初めてだった。太陽光の光に照らされ身体の装甲やコアが反射光をみせる。

『あれが本体か?』

女子生徒から解き放たれた髪の毛の渦はさらにうねりをあげ触手のように球体の体から髪の刃を覗かせていた。

その闇の中心にコアの配列が見えた。

「やっぱり、あれはかみのけ座だ」

『かみのけ座?そんな星座があんのか。なんかぱっとしねえな』

「たしかに名前はぱっとしないかもしれないけどそれでも古くから伝わるちゃんとした星座だよ」

かみのけ座────確か古代エジプトのプトレマイオス王朝にまつわる王妃の話があったと思う。だがあれは戦に出る王の無事の帰還を願い祭壇に髪の毛を捧げた王妃の想いを汲み取りその髪の毛を星座にしたという話だった。今回の事件との繋がりが薄い神話だ。

『大地、あいつひょっとして・・・・・・』「うん、僕も思った」

今なお黒く蠢くそれはこちらに敵対心をあらわにし威嚇をしている。が、先程までの勢いは最早皆無に等しく不憫にも思える有様だった。

深淵だったそれは今となってはもはや触手をうねらせるだけのただの毛玉だった。

「『あいつ弱い』」

ルナティクスの脚のコアに光が集う。そして勢いよく飛び上がり光を放つ足を蹴り出し、急加速してコーマオーバーロードへとドロップキックを放つ。

『これで終わりだ、“ルーンドロップ”!!』

キックは衝撃波を放ちながらコーマのコアを一気に砕いた。コーマオーバーロードはそのまま消滅した。

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