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覚醒のオーバーロード  作者: Haru
第二章 時の支配者(クロック・ルーラー)編
13/29

CHAPTER Ⅰ.星読みの賢者-2

2


「“星読みの賢者”て知ってる?」

そう聞いてきたのはここ最近になって話すようになったクラスメイトの立木律くんだった。

昊姉の事件から一週間がたった頃のことだ。

中間テストを終え少し浮き足立っていた教室は放課後を迎えさらにその様相を際立たせた。ちなみに僕はこのところの騒ぎで勉強どころではなく高校最初のテストは最悪のスタートを切っていたところだ。もちろんこれはいい訳とかじゃ無い。

「星読みの賢者?聞いたことないなあ。何かのゲーム?」

「違う違う!ほら、この前あっただろ?陸上部の連中が軒並み襲われてた事件がさ!あれその星読みの賢者の仕業らしいんだよ」

なるほど、今度はそういう解釈になっているのか。佐瀬明の時も真相とは違う事実が皆の中にあった。どういう理屈かはまだ分からないが、この事件の中心にいる誰かがそうやって隠蔽をしているのだろうか。そして今回の陸上部の事件の関しても同様というわけだ。

「犯人ってこと?その星読みの賢者って人が陸上部を襲ったんだ?」

「直接やったわけじゃないらしいよ。なんて言うのかな、ほら闇のブリーダーみたいな感じだきっと。そいつが陸上部を襲った奴になにか特別な力を与えたんだ」

「えっ」

その展開は予想していなかった。まさか力を与えた側が噂になっているとは思いもしなかったからだ。けれど僕が知る限りでもまだオーバーロード絡みの事件は二件しか起きていない。噂になるにはさすがに早すぎないだろうか。

それとも、それだけ昊姉の起こした事件が大事として捉えられたのか。

少しだけ、心が曇る。いくら記憶が改竄され認識として罪が見えなくなっていたとしても、昊姉が犯した罪は消えない。例え、それを本人が覚えていなかったとしても。だから、その意識は僕が持つ。そう誓っている。

「う〜んやっぱなんか起きてるんだよこの学校でさ!ボクたちが知らないところでさ!三崎くんもそう思わない?」

「・・・・・・」

「三崎くん?」

「あ、ごめん!ちょっとぼーっとしてた」

その渦中に僕が巻き込まれてる、なんて言えるわけなかった。何とか取り繕ってみたけど不自然じゃないかなと少し不安になる。

「大地」

少し離れたところから白彌くんが呼びかけてきた。

「あ、うん。すぐ行くよ」

僕は急いで荷物をまとめる。このままこの話題を続ける気もなかった。

「ごめんね、立木くん。また明日」

「うん、それじゃあね」

無理に会話を終わらせたというのに立木くんは変わらず穏やかな笑顔で手を振っていた。そういう気さくなところで気が合うのかもしれない。

「随分と楽しそうだったな」

「あれ?もしかして嫉妬してる?」

「ばーか、誰がするかよ。ただ、上手く馴染めてきたんじゃねえの。教室に、さ」

素直に嬉しかった。このところ僕は少しだけ他人と接することに以前ほど臆することが無くなった。白彌くんとも軽口を言い合えるほどに心の壁が薄くなったのを感じている。

「だが、気になる会話してたな。“星読みの賢者”だったか」

「うん。そういう噂が出るくらいには被害が知られてるってことだよね」

「ま、噂は噂だ。今はまだそう深く考えるな」

「うん。あ、そうだ今日もこの後昊姉のところに行くつもりなんだけど白彌くんも行くよね?」

「あ?なんでだよ」

「暇でしよ?どうせ」

「あのなあ・・・・・・」

ぶつくさ言いながらも断らないあたりやっぱり優しいなと思う。本当に僕はいい友人を持てた。




「お、一年ズ。相変わらず一緒だな〜付き合ってんのか〜?」

「ちょっと絵里」

昊姉の病室には笹木絵里先輩と宮嶋小春先輩がいた。

「来てたんですね、あ、昊姉これおばさんから服の替えとか貰ってきたから」

「うんありがとう適当に置いといて」

とりあえずベットのそばのキャビネットの上に置いておいた。

「あ、大地くん、それ後で私がちゃんと閉まっておくから安心してね」

「ありがとうございます宮嶋先輩」

宮嶋先輩とは、昊姉の一件で少しだけ打ち解けたように思う。何かと気を回してくれるので頼りがいのある人だ。つい甘えてしまう。

「おや〜?大地くん、とな〜?この間まで弟くんって呼んでなかったかな〜?これは一体〜いでっ」

「名前で呼んでるだけでしょ。余計な勘ぐりはしない」

宮嶋先輩の手刀が見事に笹木先輩の脳天を叩いた。この二人のやり取りもここへ来る度に見せられている気もするけど。

「元気そうだな」

「うんあと二週間もすれば退院できるだろうって」

「そりゃよかったな。ま、俺が優しくすんのもそれまでだ」

「そりゃどーも。いつまでも辛気臭い顔されてちゃ足に響くからね、てゆーか優しくされたことなんて一度もなくない?」

「あ?そりゃあんたが知らないだけだ」

「そーゆーのカウントされないんで」

あちらもあちらでなにやらいがみ合っている。このふたりってこんなに・・・・・・

「仲良いね〜お二人さんは」

「えっ」

いつの間にやら笹木先輩が僕の肩に手をかけ耳打ちしてくる。

「昊って白彌くんに対してだけは結構辛辣だよね」

今度は宮嶋先輩まで加わってきた。と言うかなんで僕の耳元で話すんだ。くすぐったくてしょうがないんだけど。

「いやあれは辛辣というかあれだね素だね素」

「ス?」

「素で話せる相手なんてそうはいないぞ〜?もしかしてもしかするんじゃない?ねぇ、弟くんや」

「もしかするかもしれませんね〜?大地くんお姉ちゃんとられちゃうかも」

と交互に耳打ちしてくる。羞恥とこそばゆさがもう限界だった。

「や、やめてくださいっ!二人とも」

「ど、どうしたの大地?」

あ、思わず大声が出ちゃった。僕を見る昊姉の目が痛い。両肩にいた二人は既に離れ何もやってませんよとでも言わんばかりにそっぽを向いていた。

「いや、なんでも、ない」

なんと言うか今すぐ走り去ってしまいたくなった。

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