小さな英雄(リトルブレイブ)編 CHAPTER Ⅱ. 9
9.
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私は見ていた。夜の学校、そのグラウンドで戯れる二つの星を。
あの女の方はやはりいい素材になってくれた。このままコアを回収しても良かったが、最後に見せたあれは私の期待以上のものだった。あれならば我らの目的の為にさらなる期待を超えてくれそうだ。だから、このまま静観することにした。しかし───、
「やはり問題はあいつだな」
白彌瑞月。かつてラボにいた子供の一人。だが、五年前の事件以来その消息はつかめなかった。私がその姿を確認した時にはもう彼はそこにいた。
そう彼、もしかしたら白彌瑞月以上に厄介な敵になるかもしれないあの少年。
────三崎大地。
彼は、オーバーロードに対し何らかの影響力を持っている。でなければあんな芸当ができるはずもない。何せ、今の白彌瑞月は自力でのオーバーロード化が出来ないからだ。そして、私が以前見たものと今のルナティクスとやらはまるで見た目が違っていた。
これも彼の力によるものなのか、なんにせよ彼についてもまだ調査が必要だろう。
携帯のコールが鳴る。
「やあ、調子はどうかな。そろそろみなが集まった頃合いだ。戻っておいでアリエス」
我が主にこのことを伝えるべきか。いや、あの方の事だ。私の知る事などとうに承知していた上で放置しているに違いない。そういう享楽を忘れない人だ。
「はい、ただちに。我が主」
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