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「雪だるま、かな」と姫は言った

掲載日:2021/12/01

応募の都合上、本文は千文字で終わりです。

 ハットトリックだ。

 うちのサークルの姫と、デートの約束を取り付けたのだ。


『クリスマスって暇? ちょっと付き合ってほしいんだけど』


 僕は舞い上がった。


『ほんと? 良かったー』


 姫の笑顔は値千金。


『当日は動きやすい服装で来てね』


 デートだ。誰がなんと言おうとも。


 イヴの新雪。聖なる朝。駅前広場。中央にはクリスマスツリー。

 交差点の向こう。遠目にも目立つ彼女。

 信号が変わる。駆けてくる。


「おはよっ!」


 ふんわりと笑う姫。僕は幸せ者だ。

 聖樹に見送られて、バスに乗る。

 姫ご自慢の黒髪ロングが、今日は短くお団子にまとめられている。


 目的地に着く。大きな一軒家みたいな建物だ。児童クラブ……。


「早く入るよ。——おはようございまーす」


 僕たちが入っていくと、特に女の子たちから、定番の質問が飛んでくる。


「違うよ、彼氏じゃないよー」


 そりゃそうだ。それと姫はここでも人気者らしい。


「助手、みたいな? そうだね。私の助手!」


 都合良く使われている。自分でも笑ってしまう。

 そんな助手の仕事。


「お外で雪かき。それと雪だるま、作ってほしいな。みんな喜ぶから」


 僕と何人かで雪かきだ。

 姫や子供たちはクリスマス会。

 サイコロを振って、楽しそうに遊ぶ。

 今時ラジカセ、カセットテープで音楽を流す。

 最後にはみんなで雪合戦。


「お疲れ様。これお昼ご飯のお味噌汁。おいしいよ。それと干し柿。食べる?」


 姫と食べればなんでもおいしい。どんなお菓子よりも、姫と食べる干し柿は甘い。


 再び忙しく、時計を見ると、午後三時。

 姫と僕は上がりだ。


「今日はありがと。まだ時間ある?」


 姫が何かを差し出してきた。


「映画の割引券。クリスマスプレゼント!」


 映画館に着くと、客席はがらがら。B級アクション映画だ。クリスマスに見るものではない。

 サーファーなサンタクロースと、イースター島のオーパーツ、モアイが大暴れとか、そんな内容だ。


 銀幕の前の暗がりは、まるで二人だけの密室だ。

 彼女の方を見る。目が合う。

 にっこりと、笑顔を見せてくれた。


 外に出る。

 クリスマスの電飾が映り込む、姫の大きな瞳。まるで鏡のようだ。


「好きです。付き合ってください」


 思い切って告白した。

 姫は少し考えて。


「雪だるま、かな」


 薄く笑みを浮かべて。


「ちょっと不格好な、雪だるま。春には溶ける、雪だるま」


 それって……。


「みんな喜んでたから。また作りに来てほしいな」


 都合良く使われている。

 だけど僕は、姫のその一言で、うれしくなってしまったのだ。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 凄い……! テーマ全部使った? 干し柿まで…… それでいて破綻してないのが凄いです。 彼女の答えはちょっと卑怯?とか思ったけど(*´艸`*)
[一言] 幸せいっぱいですね♡
2021/12/01 13:53 退会済み
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