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第1話 その1

板張りの廊下を慌ただしく走り抜ける。ほかの社員がいるのも気にせず、目的の一室へ・・・時間がない。暗い茶色の髪が風を切る。彼女の額には汗、社会人足るもの時間を厳守する必要がある・・それはわかっていたことだが、今日だけはうっかりしていた。なぜなら3年ぶりに帰ってくる・・・

「遅い・・・」

彼女の上官である人物が、入り口に息を切らせて中腰になっているリリーに鋭い視線を向けている。本日待機組のほかの社員は、どんまいと上官に気づかれないようにこっそり表情に出しリリーを見る。そんなみんなの視線を受けてか、彼女も苦笑いで返事をする。

「相変わらずおっちょこちょいだな」

そういって上官の影に隠れていた彼は、にっと笑ってリリーに片手を挙げる。少し癖っ毛のある黒髪、真新しい卸されたばかりの制服、そして左手は・・・

「今日から配属になりましたナバル・・・ナバル・ラグウィンです」

そういって彼、ナバルはきりっとした姿勢で右手を額に付け敬礼をした。他の社員もそれにあわせて各自敬礼をする。リリーも社員の中に並び敬礼をする。挨拶もそこそこに、他の社員は通常業務へ戻り上官・・・このガーディアンでは他の者をまとめているため主に隊長と呼ばれている。中央中立協会セントラルの支援を受けている警護騎士派遣会社、ガーディアンは出動人員を騎士またはガーディアンと呼んでいる。騎士以外にも内勤の人員も確保し業績や会計もびっちりとセントラルへ報告がいく。ガーディアンはこのセントラル管理の都シジュクの警護ならびに、近隣の街への派遣警護など行っている。世界は停戦を迎えているが、他国の騎士が徒党を組み盗賊行為など戦争の傷跡はまだまだいえていない。そう言った危険から護衛するのもガーディアンの務めでもある。各国に1つセントラル管理の都を設置しガーディアンも配置される。各国各地に情報をセントラルに集め、均衡状態を知る為の重要な役割もある。

シジュクのガーディアンの隊長、紫がかった胸くらいの長さの髪を、頭の後ろでまとめシンプルなデザインの髪留めをしている。身長は女性としては大きく、ナバルと同じくらいの背丈で、制服姿がとても様になっている。他の騎士達と違い彼女は武器を持っていない。

「なんだ、私のお尻がそんなに魅力的か」

そう言われてナバルは、はっとして視線を上に向ける。あっはっはと笑いながらナバルの肩を叩き「冗談だ」とにやりと笑った。


ナバルはリリーに案内され、ガーディアンの建物内を見てまわった。3階からなる建物で、1階は騎士待機所と習練場、2階は内勤のデスクと会議室やら通信室やら、騎士を補佐する課もある。3階は見晴らしのいいという理由で、社員食堂になっている。もちろん外食を利用する者も少なくない。

「へ〜中央中立協会セントラル学校アカデミーと違って、気が楽そうだ」

そう言ってナバルは大きくあくびをする。それをみて「ふふっ」とリリーは笑う。

「確かにアカデミーは、ガーディアンになるための訓練や知識とか・・・ガチガチだからね」

「もう・・・アカデミーに戻りたくない」

ナバルの意見に、私もとリリーは苦笑いした。アカデミーの生徒の能力によって、卒業までの期間に差がある。ナバルが3年で出てきたのは割と一般的な年数で、リリーは成績は優秀であったがセントラルにて、擬態騎士フォームナイト候補生に推薦されたため、卒業までに4年掛かっている。擬態フォームは異世界の力を使うため、とても強大な力を秘めている。それを扱うためには、自分の中で力を押さえ込む精神力と集中力が必要とされる。フォームとは、内に秘めた異世界の力をある程度解放することにより、異世界の力を使用する。契約した異世界の住人の姿と武器を擬態し、戦う技術のようなものである。押さえ込めなくなった場合、擬態が解けるかはては力に取り込まれ暴走をしてしまうことがある。そのため戦争末期はそう言った無所属の敵も乱雑に入り組み、世界は地獄を味わうことになった。

「そういえばナバルは無事擬態フォームできるようになれたかな」

リリーは少し悲しそうな目で一瞬ナバルの左手を見る。鎧のような金属の左手。

「いや・・・・30秒だけ」

「それでほんとにフォームナイト?」

うるせーとナバルは笑い、落第生ねといいながら逃げるリリーを追いかけた。ナバルの初日は、3年ぶりの帰郷のため上官であるレイン隊長が気を利かせて、午後休にしておいてくれた。お言葉に甘え久々に街を歩いて見渡す。変わらないものと変わったもの、それぞれをナバルはゆっくりと確認した。ナバルはガーディアンが用意した社宅で生活をする。しかしナバルはシジュクの生まれだが帰る実家などなかった。ナバルは今両親がこちらにはいないことを知っていた。ただ元気でやっている・・・それだけはわかっていた。


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