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6-3 イケメン令嬢は幸せを取り戻すために戦い

 それから一週間後、中々現れない私に痺れを切らしたアンナ姫は、ヘンリーとマーガレットの公開処刑を宣言した。罪状は、アンナ姫を殺そうとした罪だとか。勿論嘘だ。

 アンナ姫は、最大の罪人であるエリザベスが来たら二人共釈放する。と、国民に伝えている。


 アンナ姫のことだ。きっとそれも嘘なのだろう。

 だが私は敢えて、死刑執行の場でアンナ姫の前に現れることにした。




★☆★☆★☆★☆★☆★☆




 空は晴天。

 百五十人程の民衆が集まる中、その中心には断頭台から首を出す二人の人間。

 ヘンリーとマーガレットが、二人並んでいる。ぐずぐずと涙を零すマーガレットと、無表情で受け入れたかのように見えるヘンリーが対照的だった。


 私は、堂々と断頭台へ進む。人々は私の存在に気が付いて、私を避けるように左右へ移動して、私の歩く道が作られていった。


 アンナ姫は私の存在に気が付くと、にい。と笑う。


「あら。来たのね。エリザベス・エヴァンス。約束通り、ヘンリーとマーガレットは死刑を辞めて、投獄させるわ」


 民衆の手前、そのような発言をする。


「いや、その必要はない」


 私は、そう宣言した。


 これは賭けだ。ヘンリーとマーガレットが牢獄に戻されたら、きっともう二度と二人を助けるチャンスは訪れない。この場で助け出すために……私はアンナ姫を、騙す必要がある。


「一人で考えていて気が付いたんだ。私は二人のことが大切じゃない。私は何より、ただお前が憎いんだ」

「な、なんですって……?」


 迷いを見せてはいけない。この場で二人を殺されたら終わりだ。怪しまれても終わりだ。誰よりも冷徹な目をして、ヘンリーとマーガレットすら騙してみせる。


「二人は別に死刑になっても構わない。だがお前だけは確実に……殺してみせる」


 そう言って、私は腰に差す剣を抜いた。

 アンナ姫は冷や汗を浮かべる。マーガレットの方を見ては、絶望的な表情を浮かべているのを確認すると、これが嘘ではないのではと焦ってきている様子だ。


「何やっているのよ! こいつを捕まえなさい!」


 アンナ姫の命令で、周りの衛兵は私を襲う。

 一人が切りかかってくるが、軽やかに避けて衛兵を切りつける。

 更に他の衛兵が私に切りかかろうとするが、剣を振り下ろす前に蹴りを入れた。


 更に更に、襲い掛かってくる衛兵を次々と切り付けて、地面に衛兵の山を小さく作る。


 だがしかし、私だけで国の姫を守る衛兵を全て倒し切れる程、甘くはない。

 次々と襲い掛かる衛兵に対して、私は徐々に疲弊(ひへい)していく。



 その時、(くわ)を持った民衆の一人が、衛兵に殴りかかった。

 民衆の一人に続いて、民衆達が続々と衛兵に殴りかかっていく。


 彼らは……私の住んでいた村の人達だ。私がこの場まで呼んだのだ。


「エリーを助けるのよ!」「こんのクソが! お前なんて姫じゃねぇ!」「私利私欲のために権力を使いやがって!」


 村人達の数は、総勢五十人。この場にいる民衆の三分の一が私の村の者だったのだ。

 しかも、残っている民衆の中には、村人達から話を聞いた近くの町の者もいる。彼らは、慌てる一般人に対して、「これは演出だ」と言って周りを静観(せいかん)に努めさせている。


 衛兵の数よりも多い村人に姫は顔を徐々に真っ青にさせていく。


「何よ……! 一体、一体何が起きているのよ! 他に……他に誰かいないの!? 私を守る人は誰かいないの!? 何なのよ無能衛兵共! やめなさいよ……止めなさいよ! エリザベス!」


 アンナ姫は罵声(ばせい)に耳を塞いで、涙を浮かべて私に命令をしている。

 勿論私は聞く気等ない。


 私はゆっくりと、アンナ姫に近づいて行く。


「ひいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


 光の反射する剣に恐怖したようで、アンナ姫は震えあがって走って逃げていく。

 途中で転んで美しいドレスが泥だらけになるが、恐怖に支配されたアンナ姫はそれすらどうでも良いようで、上手く立ち上がる事が出来ずに半ば()いつくばりながら私から逃げて行った。

この度は本小説をお読みいただき誠にありがとうございます。

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