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5-2 イケメン令嬢は村人達に愛されて幸せに暮らし

 私は姫から嫌われている。そして、私を置いておくとこの村に危機があると知り、一番怒りを見せたのは、私に仕事をよく頼む、年配の女性だった。


「だからなんだってのよ! あたし達はたっくさんエリーに助けられて来たのよ! 金目当てに依頼をこなしていたあんた達とは違って、病や怪我があれば本気で他人を心配できるような子なのよ!」


 その言葉を次に同意したのは、年配の男性だ。


「そうだべ。おらの孫の遊び相手にもなってくれた。大きな荷物を持っていたら率先してもってくれるっぺ」


 男性の言葉に続いて、他の人も声をあげる。私が一緒に遊んだ子供や、ハリーに乗せた十代の女性。

 子守りを手伝った女性や、畑仕事を手伝った男性。


 私の行ってきたことが積み重なって、私を守っているのだ。



 自分が働いてきた時と態度が違う村人達に対して、赤髪の男はイラついたのか、歯を噛み締めて村人達を睨めつける。


「随分と酔狂(すいきょう)な村だな! 村にやってきて一年も経っていない他人相手にこんな同情するとはな。お前達全員皆殺しだよ!」

「その通りだ」


 肯定したのは、他でもない。私自身だった。

 私は続けて、村人達に言葉を投げかける。


「皆を危険な目に合わせるわけにはいかない。私達はこの村から出て行こう。今この場にいないヘイグ……いや、ヘンリーとマーガレットにも、私から声をかけよう」


 私が自分の住む小屋へ戻ろうとすると、後ろから声が投げかけられる。


「こんな奴の言うことなんて聞くことないわよ! あたし達が守るから!」

「お気持ち痛み入ります。ただ……このような小さな村で、国家に抗うことは難しいのですよ。私のことは気になさらずに、是非今まで通り暮らしてください」


 私の言葉に、一瞬場は静かになった。

 沈黙を破ったのは、私ではない。村人でもない。赤髪の男でもない。


 私が声を一度たりとも聞いたことがない男。

 四角い眼鏡をかけた男が、汗をかきながら声をあげた。


「そ、そそ、そそ、その、その……」


 久々に喋ったのか、どもって次の言葉が出てこない。

 何秒か同じ単語を繰り返した後、四角い眼鏡の男はやっと言葉を発した。


「その程度で、諦めてしまうのですか」


 村人の男性は、敵側の発言だと言う事もあり、「何を言うんだてめぇ!」と食って掛かる。

 それを止めたのは、村人の女性だ。


「いや、この男の言う通りよ。姫が何さ! この村の人間皆で……この村じゃ足りないなら、周りの村も、町も巻き込んで……エリーを幸せに暮らせる環境を作ってやるわよ!」

「そうだよ!」「よく言った!」「エリーを守るっぺ!」


 各々声を上げた。


 私は、思わず目に涙が浮かんだ。

 こんなに沢山の人から愛されるだなんて、私はなんて幸せ者なんだろう。


 本当は村の皆のことを考えたら、拒絶するべきだ。

 でも皆の気持ちが嬉しくて、拒絶することなんてできなかった。

この度は本小説をお読みいただき誠にありがとうございます。

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