5-1 イケメン令嬢は村人達に愛されて幸せに暮らし
あれから私達は、村に戻った。
私の姿に気が付いた年配の女性が、声をかける。
「あらエリー。やっと帰ってきてくれたのね。仕事が溜まっていて困っていたのよ。帰ってきてくれて嬉しいわ」
「すみません。ご迷惑をおかけしました。本日から離れていた分も働きますので」
そう頭を下げると、さっそくとばかりに女性は私に薪割りの仕事を頼んだ。
マーガレットの仕事をどうするかも忘れてはいけない。ひとまず今日は、一緒に薪割りを頼むことにした。
それからというもの、村での暮らしは平和だった。
尚且つ、楽しかった。
村人が病気とあれば森へ薬草を取りに行き。
村の子供が泣いてぐずれば、走ってあやしに行く。
村人は私達を信頼して、私達も村人を信頼する。
ヘンリーに敵対心を持っていたマーガレットだったが、一緒にいると彼の誠実さを少しずつ理解していった。
暫く経つと、いつの間にかこっそりと私の可愛さの語り合いをするようになっていた。
その事実にはかなり驚いたが、二人が仲良くしている姿は、実に楽しいものだった。
幸せだった。
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だが突如、再びあの男達が現れることによって、平穏が崩された。
冒険者の二人組だ。
私は長い間平穏に暮らしていることで忘れていたのだ。
私達に悪意を持っていて、私達の名を知っており、私達の居場所を知る人間がいると。
「随分と楽しそうに暮らしているじゃねぇか」
冒険者二人組のうち、赤髪の男が私達にそう言う。隣にいるもう一人の冒険者。四角い眼鏡をかけた太った男は今日もおどおどと黙ったままだ。
「前回の件で懲りたと思っていたが……また性懲りもなく現れたのだな」
私がため息をつきながら尋ねると、赤髪の男はにやにやと私の周りを歩く。
「あの後よぉ……。近くの街の酒場でお前達のことについてぐちぐち文句を言っていたら、お前達の情報を集めている人間に会ったんだ。何やら姫の側近とのことだ。お前達、相当姫から嫌われているらしいな」
そこで、婚約者を殴った。との情報が出てこない辺り、アンドレは私達と合った事を周りに話していないと分かる。
まあ、そりゃあ。「元婚約者との再縁を望んだ挙句女相手にボコボコにされた」なんて主張は、中々できないだろう。
しかし、殴ったことがバレていないだけマシというだけで、姫から嫌われているとバレた時点で、私達の状況は良くない。
赤髪の男は村人達に向けて叫ぶ。
「おい! この女は、この国の姫から嫌われている女だ! 婚約者を寝取った女だ!」
まだキスもしていないのだが……。
「この村に置いていたら、この村は燃やされるぞ!」
そう言い切った赤髪の男は、勝ち誇った表情をする。
だが対して……村人達は、彼に怒りを見せた。
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