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⑴『批評雑考』
⑴『批評雑考』
㈠
完全なる不完全を見る様に、批評する自己は自己を批評する。或る倦怠が自己を衝動的に動かすが、それが何処にも行く当てがない、という不自由に託けて、自己は破綻へと向かう様だ。しかしまた、自己が夜と朝によって、生かされていることは、明白なのだ。
㈡
今批評は、批評と言う形を取らずに、雑考という、極めて幅広く、また、強度のない、文字通り、雑考そのものである。ただ、言葉を繋いでは、自己を顧みて、自分が何たるかを、また、自分が何になりたいかを、思考するのである。批評は、この様な雑考も、批評と呼ばないかもしれない。
㈢
それでも、一応は、批評という形を取っている。自己が自己であることの、不確定な不可思議と、決定的な自己が自己以外の何物でもないという、そういう根源を持った、批評である。誰が悪い訳でもない、ただ、戦争は悪だ、自然破壊は悪だ、という、格言めいた、不可思議な批評雑考である。