エピローグ
エピローグ
心臓の鼓動が速く、手が小刻みに震えている。
これまで何人もの取材対象者と、接してきたがこれほど緊張感と恐怖心に支配されたのは初めてかもしない。
気をまぎらわすために、壁にかけられた[禁止事項]と書かれたプレートを読んでいると、向かいの扉の外から、数人の足音が聞こえてきた。
おそらく1人は後藤毅、残りは刑務官だろう。間もなく向かいの扉が開くと、受刑者服を着用した男がパイプ椅子に腰掛けた。
(なるほど)日奈子は対面する男の顔を見て合点がいった。
後藤毅は、目つきは悪いが、整った顔立ちをしていて、週刊誌ではモデル顔と書かれていたりもした。年齢も40歳とのことだがそれよりも若く見える。それを利用して、結婚詐欺や売春斡旋にも手を染めていたらしい。
暫しの沈黙の後、日奈子は自己紹介と同時に名刺を差し出した。
「初めまして週間記者の望月日奈子と申します」
後藤は名刺を一瞥すると徐に口を開いた。
「それでなんの用?」
「今、来月に載せる特集の取材をしているんです。簡単に言うと死刑制度の是非についてなんですけど。死刑囚の生い立ち、遺族の苦悩、司法制度などを中心に調べています。」
「それで、何人かの死刑囚にインタビューすることになったんです。なので、あなたからもお話を伺えたらと思いまして、元四代目烏丸組組長後藤毅さん。