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いつも通り短いです。
視点はランタナっす。
冬になると足の指をつりまくる現象にそろそろ名前つけたいですね。
ん?ただの運動不足?正論は嫌いです。
緩やかに流れる川にゆっくりと素足を入れる。日差しの暖かさを全身で受けていたために、川の水の冷たさを心地よく感じる。
「はぁ……」
漏れたタメ息は、ちゃぷちゃぷと音を立てながら流れる川のせせらぎに消えていく。
タメ息を吐いたところで全身の鉄臭さを拭うことは出来ないため、ベットリと血で張りついた服を脱ぐ。
脱いだ服を川辺で寝かせているウルハの横に置いて、すぐ近くの浅瀬に腰を下ろし、下半身を水に浸らせる。
「あり得ないな……」
それは自身の失態に対しての言葉だ。あれは作戦の失敗でも私の弓矢の技術に問題があるものではなかった。
純粋に私の判断ミスだった。
確かに弓矢の技術が未熟なのは明白ではあるのだが、今回の失態はそこが原因ではなかった。
「なんで私は避けなかったのかねぇ……」
私の立っていた岩、あそこに立っていたのはそういう作戦だったからだ。
けれど、私はその作戦をあの一瞬忘れてしまっていた。
いつものような戦い方だと、弓矢は相手の視界に認識されない位置からの狙撃が狩りの基本であった。
しかし、今回は敢えて姿を見せる作戦にしたのだ。
「わざわざ背面に急流の川を陣取ったってのに……」
なぜそんな作戦にしたかは簡単なことだ。あのヤングウルフの長が飛び迫った瞬間に私は半身になって避けていたら、あのヤングウルフは今頃、ちょうど私たちがいる浅瀬まで流れてきていたのだ。
「矢が読まれるのって意外とキツいんだな……」
自分がそんな簡単な判断を欠いた理由を分析するとそれは明らかだった。
今まで、獲物の居場所をこちらが先に認知してから不意に弓矢を放つことで狩りを成功させていた。
つまり、狩りにおいて弓矢の読み合いなどありえない。
だからこそ、今回、真っ正面から弓矢を撃つことで実感した。矢の軌道を読まれることの恐怖を。
それはこちらが手も足も出ずに死ぬことの前兆とも言えた。
冷えた水に体が慣れてきたところで、水をすくって全身に着いた血を流していく。流れ落ちない汚れには手で拭って落とす。
そうやって体をすすいでる内に自分の判断ミスを再び思い返してしまう。
段々と自分の不甲斐なさに悔しさを感じ、そして苛立ちを覚えた。
右手を固く握りしめて勢いよく叩きつけた。
「あぁ!くっそ!私のドアホ!!」
自身に向けて吐き捨てた悪態は自分に虚しさだけを残して消えた。
更に叩きつけようと挙げていた拳は既に力なく、ただ指を軽く曲げただけの状態で、その手は重力に従うように力なく水面に落ちる。
ちゃぷん
水が跳ねる音と緩やかに流れる川のせせらぎだけが耳に残った。
それはやるせない気分に支配されたようだった。
「ランタナさん……
さっきからめっちゃ水飛んでくるんですけど……」
私はハッとして後ろを振り返る。完全にウルハの存在を忘れていた。
半身を起き上げて顔にかかった水を拭うような動作をするが、ウルハも血まみれになっているため、顔には赤黒い血痕が広がるだけだった。
「ぐうぇ……鉄くっさい……」
ウルハは自身の現状を理解したのか吐きだすようなマネをする。
「………ウルハ、おまえどの辺から起きてた?」
ウルハは苦笑いを浮かべて「あー……えーと……」と言う。察した私はすぐさま釘を刺す。
「嘘ごときで私は騙せんぞ速やかに事実を述べろ。」
嘘を見抜くのは昔から得意で、ハイドレの悪さをした時は常に私が見抜いて叱っていたからだ。
その話を知っているウルハは何かを諦めたような顔をして正直に話し出す。
「えーっと……
馬に揺られてる時に一度起きたんですけど……
なんか縛り付けられてて身動き出来ないし眠かったんで二度寝しまして……」
あの状況で二度寝を決め込める性格に呆れながらも話の続きを促す。
「えー……そのあとはなんか……
ランタナさんが大声あげた辺りでぼんやりと目が覚めてたんですけど、そしたら水が飛んできたんで目が覚めたって感じですね……」
ため息がまた漏れる。
「ウルハ、お前は私が情けなく見えるか?」
「んー……そうですねぇ……
いつもと比べたら情けないのでは……?」
「ふっ……
なんで疑問系なのさ。
私も今自分の不甲斐なさに呆れていたところさ……」
自嘲するようにそう呟く。
「あー、いや、そうじゃなくて……
なんて言うんですかね……
僕が不甲斐なく思うのは不貞腐れてる今のランタナさんのこと……
いや、なんかこれだと違うか……?」
などと私と会話する気があるのかないのかボソボソと自問自答をし始めた。
「つまるところ、私が情けないってことじゃないのか?」
「あぁ、まぁ、そうですけど。」
自分よりも7歳も下の少年にすらそう見えているんだ。私はさぞヒドイものだっただろう……
「あのですね、上手くは言えないですけど、ランタナさんがあのヤングウルフを避けられなかったことは別に問題なかったと思ってます。いや、危なかったんですけど。
えーと……あぁ、つまり、失敗したことを根に持ってウジウジしてる姿が情けないです。」
情けない私にそれでも話をするウルハの言葉に耳を傾けていると段々この少年が言いたいことが分かってきた。
元々、内向的なこの少年はその拙い会話力で、励ましの言葉を私に伝えようとしていたのだ。
その意図が読めると、この少年の不器用さに少しばかり顔がニヤケてきた。
「……なんですか、元気じゃないですか。
心配して損した……」
その言葉でついに笑いが堪えられなくなった。
「ハッハッハッハッハ!
心配か、そうか、心配してくれてたんだなハッハッハ」
「なんで笑うんですか……
なんか励まし損じゃないですか……」
「いやいや、キチンと励まされたぞウルハ、おかげでこうやって笑えているのさ」
ウルハが「は?」とか生意気に首を傾げたので頭をガシガシと撫でる。
「ただ、そうだなウルハ、励ますなら情けないとか言うのはダメだな。
後はいつも言ってるがハキハキと話さないとダメだぞ。」
ウルハがため息を吐いて「はぁ……また始まった」とかほざくので顔に水を思いっきりかけてやった。
水と血でベタベタのビショビショになったウルハはひどく嫌そうな顔をした。
「あとはそうだな、乙女の裸を気安く見ちゃダメだぞ。」
「えー……
連れて来られたの僕の方なんですけど……」
そう生意気を言う5歳児にまた水をかける。
感情の変化って書くの難しいっすね。努力はしませんけど。
あくまで趣味なので笑ってやってください。
相変わらず話の終わり方がテキトーなのは仕様ですね。
ではでは次の投稿を気長にお待ちくださいな。




