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第三話「盗賊の少年」

こんにちは、オロボ46です。

前回、謎の少年に襲われた二人ですが......どうなるのでしょうか?

それでは、どうぞ。

「ふっ......ようやく獲物がかかったな......」

少年は弓を引き絞り、ヤヨイちゃんに狙いを定めていた。

「サナエちゃん......逃げて......」

ヤヨイちゃんはトラバサミに足をとられていながら私に言った。

「できないよ!! そんなこと!!」

「いいから......逃げて......」

「ごちゃごちゃうるさいなあ......さっさと黙れよ」

そう言って少年は引き絞る手を離した。


「......っ!!」

「ひゃあ!!?」

矢は私とヤヨイちゃんの間をすり抜けて飛んでいった。

「おっと......僕としたことが外してしまうとは......

だが、次はこうはいかないぞ」

そう言って、少年は再び矢を手にした。

(......!! 今ならこれを外すことができる!!)

そう思った私はトラバサミを外そうとした。

「ダメッ......!! サナエちゃん......!」

「ヤヨイちゃんに助けられたのに......ほっとくなんでできないの!!」

私が叫ぶと、そばの地面に矢が刺さった。

それを見たヤヨイちゃんも足元のトラバサミを開けようとした。

矢は次々と足元に刺さっていく。


 そんな中、私たちはようやくトラバサミを外すことができた。

「サナエちゃん......! 早く逃げよう......」

そう言いかけた時、またそばを矢が通過していった。

「さあ、逃げろ......後ろから命中させてみせ......」

そういいながら、少年は背中の矢筒に手を回した。

もうその矢筒に矢はなかった。

周りには、少年が外した矢があちこちに散乱していた......


「......」

少年がどうすればいいのか聞くようにこちらを見ていた。

「思ったんだけど......

あたしが動けない間にナイフで仕留めたほうがよかったんじゃ......」

ヤヨイちゃんが遠慮がちに発言した。

「ナイフは......最近どこかに落とした......」

少年は力なく答えた。


グウウウ


 少年の腹の音が響いた。

「お腹すいているの?」

すっかり恐怖心を無くした私は少年に聞いた。

「昨日の朝に食べて以来......何も食べていない......」


 私はヤヨイちゃんの顔を見た。

ヤヨイちゃんは安心したように微笑んでいた。




「......なに......これ......?」

ヤヨイちゃんは干し肉を食べて手を震わせていた。

「美味しい......すごく美味しい......!」

そう言いながらがつがつ食べるヤヨイちゃんを見て、私も食べてみた。

「!! 本当だ!!」

その干し肉には赤いタレがかかっていた。

盗賊の少年の木の実を使った特製タレだった。

「まさかあんた......タレを使わずに食べていたのか?」

少年に聞かれて、ヤヨイちゃんは正直に答えた。

「うん......その木の実......とっても不味かったから......」

「それはもったいない!! ちゃんと調理すれば栄養満点の食材なのに!」


「そういえば、あなたはずっと一人だったの?」

私は何気なく尋ねた。

「ふふ......僕の名前は"カズヒロ"。

ここら辺で有名な盗賊団のリーダーの息子だ!!」

カズヒロくんは誇り高そうに名乗った。

「そうなんだ......だから料理も上手なんだね......」

「そうさ! なんて言ったって僕はあの有名な盗賊団のリーダーの......」

「でも、リーダーの息子にしては弓矢が下手くそだよね」

「......」

幼い私は悪気なくカズヒロくんの心を傷つけてしまった。

「もしかして、カズヒロくんが一人だったのは

盗賊団から追い出されていたりして......」

「サナエちゃん......もうやめてあげて......」

落ち込んだカズヒロくんを慰めるのに一時間ぐらいかかったと思う。


 ようやく立ち直ったカズヒロくんは私たちに質問した。

「あんたが僕のことを聞いたから、僕からも聞く権利がある。

どうしてお前は......この()()と行動しているんだ?」

私はどんな意味なのかわからなかった。

「まさかヤヨイちゃんのこと? どうして牛女なんて言うの?」

私はヤヨイちゃんを見た。

「......」

ヤヨイちゃんは、思い詰めていた顔をしていた。

「あんた、知らないのか?

さっき傷口から蒸気を出していただろ? ウォームスだよ。この女は」

「ウォームス!? なんで? ウォームスは牛さんだよ!?」

私は驚いた。

確かに、ヤヨイちゃんはウォームスとの共通点があった。

皮膚はとても温かく、傷がつくとそこから蒸気がでてくる......

だけど、私はヤヨイちゃんが人間ではないことを認めたくなかった。

「確かにヤヨイちゃんはとても暖かいけど、人間のはず......」

「本当だよ......サナエちゃん......」


 話を聞いていたヤヨイちゃんが話かけた。

「あたしは人間じゃないの......

街の温もりのために生かされている存在......ウォームス......

本当はね、牛じゃなくて人間にそっくりなんだよ......」

「その通り。本当は街の地下で家畜のように扱われているお前が

なぜここにいるのか、不思議でたまらないけどな」


 その時、私はウォームスと街との関係を思い出した。

街を暖める熱......

それは、ウォームスの脳ミソを潰した時に発生する

強力な熱エネルギーだった。




 私を助けてくれたヤヨイちゃんはウォームスだった......

ウォームスは人間のような姿をしていた......


 その真実よりも、すでに恐ろしいことが私の身に起きていることを

この後知ることになるなんて......

いかがでしたか?

次回もお楽しみに!

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