1話 軍師に憧れる歴史好きの無職(6)
よし、まずは士官しよう。
このままでは砂金採りの人夫にされてしまいかねない。
かといって身寄りのないこの時代おれのようなニートが一人で生きていける程甘くない。
イノテは道嶋氏に仕えている使用人らしいが、この地方では道嶋氏はあまり良く思われていいないらしい。というか昔からここに住んでいる蝦夷にとって朝廷の進出と強引な金の採取作業が反感を買っているようだ。
そのため度々宮城県北部の蝦夷から襲撃を受ける事もあったらしい。
あったらしいというのも最近は朝廷の方でも強引に蝦夷を服属させようとする政策は一旦止めに入ったようである。
ここ数年は大規模な戦も無いということだ。
どこか仕官するのにもこの時代は戦国時代と違って公家が権力を握っているのだからどこの馬の骨ともわからないオレの様な者をやとってくれる所など無いそうだ。
「伊治の城のアザマロ様を頼ってみてはどうだ?あそこは対蝦夷の最前線だからもしかしたら戦のために人を雇っているのかもしれないぞ」
うーん、と言われてもおれは腕力も自信が無いからただの兵卒になりたくないんだよな。戦になったら死ぬかもしれないし。
後方で指揮を取ったり策を練ったりする参謀的のが良かったんだけど…
まぁもしかしたらそういう役職もあるかもしれないし、このままじゃ餓死してしまうから伊治までちょっと行ってみるか。
「そのアザマロってのは朝廷の偉い人なの?」
「アザマロ様は従五位下だ、お前の様な得体のしれない奴なんかと会ってくれないと思うぞ。しかし最近蝦夷の軍勢を編成しているとの噂があるからもしかしたら軍隊に入れてもらえるかもな」
なるほど。いきなり戦になるのも嫌だが一縷の望みを頼っておれは伊治に向かった。
オンロードバイクでオフロードを走るのがこんなにも大変だったとは…