1話 軍師に憧れる歴史好きの無職(4)
とりあえずバイクの始動を試みたところ問題なくエンジンがかかったので良かった。
バイクのエンジン音に「ヤマト朝廷のような人」はびっくりしていたがまあ仕方ない。
オーパーツを持ってきてしまったのだから。
これが戦国時代なら
「信長様、私の鉄の馬で武田の騎馬隊を一蹴してきます」
なんて言えるんだろうが何時代なのかわからない。
そもそも、ここは三陸海岸沿いだから伊達政宗はいるのだろうか?
伊達家の時代なら近くの港からこっそりと支倉常長が旅立つはずである。
「サンファンパーク」
支倉常長がイスパニアを目指したサンファンバウティスタ号の復元船が展示されている博物館的なものである。うちのおじいさんがサンファンバウティスタ号復元の手伝いをしていた。もう数年前に亡くなっているのだけれど、それを思い出した。
バイクの轟音が気になる様なので、押しながら街を目指す。といっても五百メートルも歩けば家が連なる集落になっていた。
一緒にいたヤマト朝廷のような服を着た男は名前を「イノテ」というらしい。
それがこの時代のスタンダードな名前なのかどうなのかはわからない。
イノテは俺に朝廷の使者なのかどうなのか聞いてきた。
獣の皮を着ているので「エミシ」ではないのかとも聞いてきた。
なんて答えていいのかわからないし、朝廷軍だと思われて殺されるのも嫌だから地元の人ですと、この地の者だとだけ言っておいた。
家が何件かある中でイノテの屋敷は立派な方だった。
とりあえず擦り傷だらけのオレを手当てしてくれるらしい。
イノテは
「てっきり道嶋様の使者かと思った」
と言った。
道嶋って誰?と思ったがあえてそこは聞かないでおこう。まずは怪しまれない事だ。