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第4話 〜第4か条の追加〜


「フィンレイ!今日はお庭に行ってみない?私が案内するわ」


次の日の朝。

朝食の席に同席した(両親に誘われたらしい)フィンレイに開口一番そう声を掛けた。


「お気を遣わなくて大丈夫ですよ」


フィンレイは相変わらずの態度。

その疑心を抱いた目はこいつ、何を企んでいるんだ……?と感じているようにも見える。


「そう言わずに!昨日言ったじゃない。私はフィンレイと仲良くしたいのよ」


仲良くしないとこの屋敷全員にDEAD ENDが訪れるからね!

勿論、最推しのフィンレイと仲良くなって楽しく話してみたいという下心もある。


「……それでは、お願い致します」


断り続けるのは良くないと思ったのかフィンレイは頭を下げてそう言う。

ま、まぁ仕方ない。私が強行突破した感じが否めないけれど、仕方ないのよ。

これも、あの悲しい結末を回避する為なのだから!


*******


そういう訳で、私はフィンレイを引き連れてお庭に行った。

お父様とお母様も姉弟同士で絆を深めるのは良い事だと微笑ましくしている。


「ね、綺麗でしょ!フィンレイはお花とか好き?」

「……嫌いでは、 ありません」


ということは、好きなのね!

私の前世情報は正しかったようだ。安心安心。


「でも」


唐突に、フィンレイが口を開く。


「華やかすぎるものは……苦手です」

「あ、その気持ちは分かるわ。薔薇とかも綺麗なのだけれど、私は小さなお花が好きなのよね」


フィンレイに共感する。

薔薇なんかは、ちょっと並ぶと見劣りしてしまい自分が恥ずかしくなってくるから、苦手だ。

見ている分には良いんだけどね。

私は、清楚な感じの花の方が好みだわ。


「その点、この庭はいいでしょう。薔薇なんかもあるけれど、自然な感じを残してある庭よね」

「そうですね」


そう。我が屋敷は侯爵家だというのにあんまり華々しく豪華絢爛!と言ったような装飾はしないしに庭も自然派なんだ。


「それにね……」


頷くフィンレイを見て満足しながら、私は言い募る。

この庭の魅力、とことん教えてやるわ!


「この庭のある花はね……魔法の花なのよ!」


なんといっても、そこにある。

この庭は素敵だが、珍しくもある。

何故かって?それは……魔法の花があるからだ!


「……魔法の、花?」


フィンレイも驚いたのか目を見開いている。

ふふ、フィンレイの表情が僅かだけど変わったわ。なんか達成感感じる!


「ここの庭師さんはね……植物の魔法使いなのよ……!だから、魔法の花を作ることなんて朝飯前、ってわけ!」


私も最初見た時は驚いたさ。

花が歌い出したり、急に色を変えてみたり、蔦を伸ばしたりするんだから。

でも、楽しいのよね。花にまるで命があるかのように私たちの声に反応して歌声を披露したりしてくれるのよ。


「ねぇ、行ってみましょ!見る価値はあるわ!」


最近はあんまり魔法の花を見に行っていなかった。庭師さんの働きもあり新しい種類も増えているかもしれない!私は興奮のままフィンレイの手を握って軽く引っ張り走り出す。


「……えっ」


フィンレイが何か言いたげに声を上げる。


「ん?どうしたの?」


なんか変なことしたかしら?


「手……握っていいんですか?」

「……?いいに決まってるわ」


そう言ってから気が付く。

────フィンレイはあんまり人とのスキンシップに慣れていないことに。自分が汚い物だと感じており、人が触れてくると戸惑うことに。


「……僕、汚いですよ」


案の定、フィンレイはそのような言葉を発する。

似たような台詞がゲーム内でもあった。

ヒロインちゃんがフィンレイにさり気なく触った時にそういうのだ。

私は、やりながら『フィンレイ様は汚くないし!むしろめちゃくちゃ綺麗だし!神の如き清らかさを持ってるから!』と叫んでいた。

その後、母親にうるさいと小突かれていたが。


しかし、私はその時からフィンレイに伝えたかったのだ。

『君は決して汚くないよ。綺麗だよ』ということを。しかし2次元と3次元、超えられない壁があってそれは叶わなかった。結構辛かった。

だけど、今なら言える!フィンレイは目の前に言えるんだから────!


「フィンレイは決して汚くないわ!綺麗よ!」


本能のままに声を大にしてそう叫ぶ。

ああ、直接話せるってなんて素晴らしいことなんだろう。

1回目、最後の最後に記憶を思い出した時には『なんでもっと早く思いださせてくれなかったんじゃ、神様のあほぉ!』と文句を言いたくなったものだが、今では感謝しています。


心の中で感動していると……。


「き、れい?」


フィンレイの心底困惑している声が聞こえた。

今までの無機質な声音とは違いそれには、人間らしさがある。


「何言ってるんですか?アンジェリカ様の仰っている事がわかりません……」

「そのままの意味よ?」


決して感情を宿さない瞳に微かに戸惑いと恐怖の色が浮かんでいる。

何を恐れているのか、私には分からないけれど……。

フィンレイファンとして失格だわ、と自分を恥じつつも目を見てしっかり答えるようにする。


「そう……ですか。でも、僕には分かりません、申し訳ありません」


きっと彼は、自分が綺麗だと称される理由が分からないのだろう。生まれてきてフィンレイは誰かに褒められた事がなかったから。


「そのうち、分かるようになるわ。私が、何度も説明していくからね……!」


それなら、分かるまで褒め続けよう。

フィンレイを褒め称えるのはファンである私の得意分野だ。

フィンレイがいつか自分を認められる日まで、私が認め続けよう。


フィンレイが認める日が来ても、私は認め続けるけど!


「いつか……アンジェリカ様の行動理由も分かる日が来るのでしょうか」


フィンレイが何事かをポツリと呟いた。

よく聞こえなくてもう一度聞き直したけれど「何でもありませんよ」と躱されてしまったので深入りは出来ない。


3、の“踏み込みすぎない!”を忘れるべからず。


あ、そうだ。

そこで私は思いたつ。

さっきのフィンレイを褒める!って奴もこの3か条……増えて4か条に付け加えておこう!


4、フィンレイを褒め称える。


私は心のメモにそっとそれを付け足した。



お読みいただき、ありがとうございます!

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