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第2話 〜彼女と彼の初対面〜


「……ジェ」


……ん?誰かが私を呼んでいる……?


「……アンジェ!」


この声はお母様とお父様かしら。

一体どうしたんだろ────って。


「あああああああ!」


一体どうしたんだろう、じゃないわ!

私、大事な事を思い出したのよ!


「あ、アンジェ!?」

「突然大声出してどうしたの……?」


両親は不審げな様子。

そりゃそうだ。私だって突然寝ていた人物が叫びだしたら不審に思う。


「あ、ええっと……何でもないです」


自分で言っておいて、いやその受け答えはないだろうと批判する。

もっとまともな言い訳を出来ないものなのか。


「そ、そう?それなら良いのだけれど……」


あ、お母様。

それで納得して下さるのね。でもお父様はまだ怪訝そうに私を見ているわ。


「それにしても!倒れてしまってとても吃驚したのよ。アンジェちゃん、体調でも悪かったの?」

「い、いえ……急にふらっとしてしまっただけです……問題ありません」


これは事実だ。

本当に乙女ゲーや前世の事を思い出して脳がキャパオーバーを起こしてぶっ倒れてしまったのだから。


「お医者様も特に体に悪い所はないと言っていたが……心配だな。しかしもう少ししたらフィンレイが来てしまう頃だ……」


よく見てみると、この場にはお母様、お父様だけではなくマイエンジェル・アリシアを含むメイドたち、お父様の執事、お医者様と多数の人物が集まっている。

皆、忙しい身だというのに申し訳ないわ。


「皆さま……忙しい身だというのに申し訳ありません。私はもう大丈夫です、ありがとうございました!お父様、もうどこも悪い所はありませんのでフィンレイを迎え入れて下さい」


取り敢えず、謝罪とお礼を告げてから、お父様に「私もう大丈夫だから、フィンレイとの顔合わせ出来るよー」的なことを言う。


「本当に大丈夫か?無理そうな時は早めに言うんだよ」


お父様は未だに不安そうだが、時計を見て時間がおしている事を確認するとそう私に言葉を掛けた。


「お嬢様!気分が悪くなられたら、直ぐに仰ってください。わたしがお医者様を呼んで参りますので!」


お母様、お父様の話が一段落すると今まで話に混ざるタイミングを見計らっていたらしいアリシアが頼もしい一言を言ってくれた。

ああ、気遣いが出来て本当に良い子だわ。

素晴らしい。


「ええ、気分が悪くなったら言うわ。アリシア、いつもありがとうね」

「いえ……!わたしの方こそ、有難うございます!いつもお嬢様には大変お世話になっておりますから……」


アリシアったら謙虚ね。

私がアリシアのお世話になった事は数え切れない程あるけれど、逆はないのに。

あれ?そう考えると私ってとっても頼りない主?こんなのが主とかアリシアに悪いわ。

私も精進せねば。


密かに決意をする。


「じゃあ、アンジェ。私はフィンレイを迎えに行ってくるから、アンジェはアイリーンと共に私の書斎に行っておいてくれ」

「はい、お父様。分かりました」

「アンジェちゃん、行きましょうか」


お母様────アイリーンお母様がにっこりと聖母の如き優しい笑顔を浮かべてこちらに手を差し伸べてくる。

私はその手をそっと取ってベッドから起き上がった。


移動しながら、私はお母様、そしてアリシアたちメイドと庭の話や季節の花の話をする。

使用人も分け隔たりなく会話出来るこの家が私はとても好きだった。


だけど、釈然としない所がある。

それは、この家があまりにもゲームと違いすぎるという点だ。


ゲームでのこの屋敷はとても嫌な所だった。

父は悪事を働く事に一生懸命、女と遊ぶのが生き甲斐のような人。

母はそんな父に嘆いて、怒って、その怒りを使用人にぶつけて酷い八つ当たりをしていた。

そして、私────アンジェリカ令嬢は傲慢ちきに育ち、自分が1番!世界一!という考えの元、使用人に威張り散らして庶民を見下し罵倒していた。


でも、今は違う。

お父様もお母様もとても優しい。

まさに理想の家族だ。


何でこんな風になったのだろうか?

私が転生した事によってゲームシナリオが狂ってしまったのか?

そう考えてはみるものの、完全なる答えは出ない。


「フィンレイ君にもこの素敵な庭も早く見てもらいたいわね」

「そうですね!庭師の皆さんが毎日手入れして綺麗に整えている庭ですから……フィンレイ様にも気に入ってもらえますよね!」


唐突にフィンレイという言葉が飛び交い私は現実世界に意識を引き戻される。


フィンレイ……。

乙女ゲーの攻略対象であり、前世の私の最推しだ。

目の前にフィンレイがいたら騒いでしまう可能性が高いから、平静を保つ為に努力しなければ。


女子の話は弾むもので、お母様とメイドたちは私が考え込んでいる間もずっと話を続けていた。皆、とっても良い笑顔。

記憶として残っているあの惨状は絶対に起こさせない。私は気持ちを新たにして、決意を強固にした。

長い長い廊下を歩いて、やっと書斎に着いた。お母様はとんとん、と軽く扉をノックして入室した。私、メイドたちもそれに続いて入っていく。


まだお父様とフィンレイはついておらず、お母様が椅子に腰掛けたのに習い私も座る。


隣のお母様はフィンレイ君に会うのが楽しみだわ、とほんわかしているが、私は仲良く出来るかな?DEAD END回避出来るかな?と必死だ。


取り敢えず、酷い扱いをしないというのは当然だが、フィンレイはここに来る前にも色々とあって、心に闇を抱えている為関わるのには細心の注意が必要だ。地雷を踏み抜かないように。慎重に!


ドキドキしながら、お父様の訪れを待っていると、遠くから足音が聞こえてきた。

これはきっとお父様とフィンレイのものだ。

嗚呼、とうとう対面なのだ。

“死亡フラグ”な義弟に……。


足音が扉の前で止まり、ガチャりと開いた。

そこには予想通りの人物。

お父様、そして……黒い髪に赤い瞳を持つ美少年。私の義弟・フィンレイだ。



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