プロローグ 〜そして、物語は終幕する〜
乙女ゲーものを書いてみました。
至らない所が多々あると思いますが少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
思い出した時には、もう手遅れだった。
私の目の前に狂気的に嗤う義弟がいる。
「…………だめ」
このままじゃ、駄目だ。
駄目なのに。
刺された腹部がとても痛くて、声を出すことさえままならない。
「御願い……っ御願いよ……っ!やめ、て」
そう喘ぐように自分の持てる限りの力をもって叫ぶ。
それでも。
「なに?今更命乞い……?はは、笑わせるね。アレだけの事をしておいて、自分がいざ痛めつけられたら……死ぬとなったら無様なものだね。あははははは!」
届かない。
私の言葉はあの子には届かないんだ。
しょうがなかった。あの子の言う通りなんだから。
「……だ、め……このままじゃ……」
でも私は止めなければならない。
そうじゃないとあの子が不幸になるから。
私はそれを知っているの。
「……っあ」
必死に這いつくばってでも動いて、あの子の足にしがみつく。だけど、そんなのは小さな小さな抵抗でしかない。あっさりと振り払われ、私の体はすぐそこにあった壁に衝突する。
「ねぇ、執拗いよ。姉さん?」
わざとらしく“姉”という単語を入れるあの子。
それは私が嫌っていた言葉だった。
『汚ならしい子供が!わたくしを姉と呼ばないで!』
脳裏に反芻する“わたくし”の台詞。
あの子を忌まわしげに見遣り罵倒する。
そんな“わたくし”にはこのような結末が相応しいのかもしれない。
ふと、義弟が憎悪の篭った瞳で此方を蔑むように睨んできた。
凍てつくような瞳の裏に烈火の如き怒りが見えた気がして私は縮みこんだ。
「そろそろ終わりにしよっか。僕ももう疲れたよ」
そう言うと義弟はその魔法の力で剣を作った。
その剣は一直線に私の心臓めがけて向かってくる。
嗚呼、私は何も出来なかった。本当の本当に全てが終わってしまう。
剣が私の心臓にぐしゃっと音を立てて刺さり、激しい痛みを感じるがそれも一瞬。
暗くなっていく視界で最後に見たのはあの子の歪な笑顔と零れ落ちる涙だった。
────許されるのなら……もう一度。
もう一度だけ。チャンスが欲しい。
そしたら、今度こそ。あの子を幸せにしてみせるから、結末を変えてみせるから────。
【DEAD END】
ここまでお読み頂きありがとうございました。
少し修正しました。大きな変更点はないので、ご安心ください。