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第10話 〜反省会〜


「フィンレイー!」

「……何でしょうか?アンジェリカ様」

「かった!硬いわよ、フィンレイ!」

「そうですか?」


あれから、何処か吹っ切れた私は、周りの目なんぞ気にせずに年相応らしく我儘に自分の行きたいように突き進む事にした。


まだ、なんて言ったって外見年齢は10歳ほどのお子ちゃまですからね。

ある程度駄々をこねても可笑しくないわよ。


「そうよ!これからは私の事は様付けじゃなくていいからね?寧ろ“姉さん”って呼んでくれても……」

「それは失礼に値しますので」


にっこりとこの世のものとは思えないくらい完璧な笑顔を見せたフィンレイにその提案は一蹴されてしまった。

嘆かわしい。


「失礼に値?そんなのしないわ!家族なのに姉と呼ぶことの何が失礼なの?」

「……っ、それは……」


フィンレイがうぐっと言葉に詰まる。

やったわ、ここを一気に畳み掛けるわよ!


「ね、大丈夫よ。ほら、呼んで……?」

「……」


フィンレイが黙りこくる。

う、ううん。もう一押し足りないのかな?

でもあんまり言いすぎるのもなぁ……。

何処か、強引になり切れない(といいつつも、今までの自分から考えると充分強引)わたしは、これ以上言わずに視線で訴えかけた。


「……あ、アンジェリカ姉様」

「……うん。分かったわ。有難う」


これが、妥協点です、とでも言いたげに視線を返してくるフィンレイに笑顔で頷いた。

まぁ、いいわ。

後々もっと砕けさせて敬語も様付けもとっぱらってやるのよ!


「アンジェリカ姉様……」

「ん?フィンレイ、どうしたの?」


ふと、フィンレイが思い詰めたような表情で、暗い声音で私を呼ぶ。


「……な、何でも……ありません。申し訳ございません」


何か用があるのかな?と聞いてみると、フィンレイはハッとしたように目を大きく見開き。それから、スッと私から目線を逸らした。


「何かあったらいつでも言うのよ」

「有難うございます」


完璧なお礼をすると、フィンレイはそれきり何も喋らなくなる。

ここは、私が!と勇気を持って色々と話題を振るとそれに対してぽつりぽつりと言葉少なに返答をしてくれる。


フィンレイはいつも、私に警戒するように疑惑に満ちた目を向けてくる。初めてあった時のルビーの瞳は宝石のように無機質で何の感情も宿しておらず、底なし沼のように暗かったけれど、今は少し違う。


僅か、ほんの僅かだけれど……。

感情が戻ってきている気がする。


それが私にとってとても嬉しい事であった。


また、私自身も変わってきている。

あれから、少しだけ自分の主張をはっきり出すようになり、強引になって、我儘にもなった。

そんな私を、お母様はにこにこと微笑ましげに見てくれるし、お父様もしょうがないな、と言いながら見守ってくれている。

使用人の皆も、それに然り。


ただアリシアやヴェルノ含む1部の使用人は私に対してよそよそしくなってしまった。

私が急に変わってしまったからだろうか?

根本的な所は、変わっていないつもりだし、そもそも少しの変化しかないと思うのだけれど……。

そんなに混乱する程なのかしら?と頭を悩ませる。


アリシアやヴェルノとの気まずい空気を取り払おうと試みているのだけれど……。


そこまでお茶会がダメだったのか?やはり辞めた方が良かったのか、あの時の直ぐに仲を修復出来るという考えは甘かったのか、そんな疑問がぐるぐると頭を渦巻く。


……と、いつまでも同じ事ばかり思案している訳には行かない。


次に、私が“4か条”をちゃんと守れているのか、について評価してみよう。


1、庭に誘って一緒に遊ぶ!

は、守れた。毎日、とは流石にいかないけれどフィンレイが暇で、私も暇な時は誘っている。

最近庭師さんがまた新しい魔法の花を栽培し始めたらしくその話について盛り上がっている。


2、理想のお姉ちゃんになる!

は、微妙な所だ。

個人的には、頑張っているつもりだけれど最近やっと“アンジェリカ姉様”呼びにランクアップした位で、まだ姉感は少ないだろう。

精進あるのみだ。


3、でも最初は踏み込みすぎない!地雷を踏まない!

は、しっかりと守っている。

地雷踏みは即バッド、レベルで危ない行為だ。

何にしても、“魔法管理会”や“奴隷”についての話題は避けて通るべき。


4、フィンレイを褒め称える!

これが、1番守れているだろう。

褒めている。褒めたたえている。

何かにつけて、褒めている。ただし、うざがられないように節度は弁えている。

それが、精神年齢大人のやることだ。


フィンレイは、元々優秀で、最近学問や剣術、魔法学、マナーや芸術、音楽など色々な勉学も完璧にやって見せて、褒める所は沢山ある。

両親も家庭教師もフィンレイの優秀さについての話に花を咲かせている程だ。

それに加えて、フィンレイは私の推しなのでもうそれは褒める言葉は永遠に出てくる。


フィンレイ褒め大会、なるものがあればきっと優勝者は私だろう。



……反省会は、ここまでにしておこう。

今のところ、目立った失敗はしていないしコミュ力も度々お父様やお母様が開催してくれているお茶会や他所の所のお茶会に参加しているおかげでメキメキと上がってきている気がする。


勉学は、フィンレイまでとはいかないけれど、そこそこだ。

特に、前世共通の学問は完璧!

……ズルとは言わないで欲しい。


そんな訳で、結構順調と自負出来る成果に心を踊らせて、日々を謳歌していた私なのだけれど────。


その日、私に……とんでもない知らせが入った。



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