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第7話 〜ジェットコースター的テンション〜


待ちに待った夕食。

いつも、待ちに待っているけれど、今日ほどではないだろう。


「フィンレイと話すわよ〜!!」


なんて宣言していたら、アリシアに微笑ましいものをみるような生暖かい視線で見られてしまった。……ちょっと恥ずかしいです。


気を取り直し、アリシアと共に夕食の席に行く。

すると、もうフィンレイは着いていた。申し訳なさそうに端っこの椅子に軽く腰掛けている。


「お母様、フィンレイ、今日のお料理も楽しみね!」


お父様は仕事が忙しいらしくて、まだいなかった。きっとお母様がフィンレイに座るよう促したのだろう。


「アンジェちゃん、来たのねっ。今日は料理長さんがフィンレイ君が来たお祝いにとより一層豪華なお食事を用意してくれているらしいわ」


豪華なお食事……!

とてもワクワクする単語だ。


しかし今日の目的は、ただお食事を食べて満足する事じゃない。

もうひとつ、とても大事な目的があるのだ。


「……そうですね」


鉄壁の愛想笑いでフィンレイは同意する。

会話を続ける為に、私は持てる限りの力を使い、優しく見えるような笑顔を口元に湛える。


「料理人さんたちのお料理は、とっても美味しいのよ!きっとフィンレイも好きになるわ!」

「そうね、フィンレイ君も気に入ってくれると思うわぁ」


助かった。お母様が会話に混ざってくれた。

正直、フィンレイに避けられている気がするから私としても2人で話すのはちょっと難易度が高かった。とても助かった。お母様、ありがとう!このご恩は忘れないわ。


「……はい。とても楽しみにしております」


ああ……。

楽しみにしてくれるのは嬉しいんだけど……。

もっと、もっとお話を続けよ?


私がフィンレイの“必要最低限の返しです!”というような返事に嘆き悲しんでいると、お父様が入ってきた。


「アンジェ、アイリーン、フィンレイ。待たしてすまない」

「いえいえ、気にしないでくださいな」

「お気になさらないで下さい」

「気にしないでください、お父様!」


大分お仕事が大変だったよう。

お父様は少しだけ疲労の色を見せながらも私たちに謝る。


お父様、いつもお仕事ありがとう!

ゲームの中では悪事三昧だったのに……ってゲームとここは違うってさっき区切りを付けたばっかりなのに。どうもゲームと比べてしまう癖がついてしまったらしい。早めに直さなきゃ。


「ありがとう、皆。……それでは、食べようか?」


お父様が席につき、その答えにその場の全員が答える。


いつもは楽しいけれど、今回は少しだけ緊張する夕食の始まりだ。



*****


私はよく頑張った方だと思う。

食べながら、ひたすらフィンレイに話を振り続けた。

お母様、お父様も私の思惑が分かったのか積極的に会話に参加してくれた。

私は良い両親を持ったものだなぁとしみじみ思った。


さて、では結果はと言うと────?


はい、惨敗です。

お庭で好感触だったのは幻惑だったのかしら?


それに、更に私を悲しくさせているのは、フィンレイは明らかに私よりも両親と話しているという事実。

年が近い私の方が喋りやすくない?それとも年が近いというプラス面も帳消しにする程私の話ってつまらないのかしら?



「……はっ!?」


気が付くと私は自分の部屋のふわふわベッドに寝転がっていた。

夕食の席から自室に戻ってきた時の記憶が全くない。

そこまで、ショックを受けていたというの、私!?


思わぬ所で自身のメンタルの弱さを知ってしまった。


「アリシア……紅茶をお願いしてもよいかしら……」


夕食の席では、お話に専念していたからか、あまり飲んだり食べたりに集中出来てなくて今更になって喉が渇いてしまった。

アリシアは「はい」と頷くといれにいってくれる。


それにしても。

今まであまり気にしていなかったけれど、元の世界ではど庶民だった私なのにあまりお嬢様生活に違和感がない。

どうしても貴族どうしの嫌味合戦や騙し合いには慣れないけれど……。


それは、やっぱり“前回”の分も含め記憶があるからかしら。

記憶があることによって、この国の文字も言語も堪能。とっても助かるわ。


1人になると下らない事を考えてしまう。

いや、それどころか人と喋っているというのに色々と考え込んじゃう事もあるのよね。

そういう癖は良くないわね。


「お嬢様、紅茶です」


お礼を告げた後、私はカップを口元に近づける。茶葉の香りは私の荒んだ心を心無しか、穏やかにしてくれる気がする。

充分に香りを堪能した後に私は紅茶を口に入れた。


「美味しいわ」


人との関係で悩んだ事は少なかった。

前世・今世合わせても殆どない。

前世では、幼馴染が世渡り上手で友達も多かった為、“友達の友達は友達”法則でどんどん増えていき。また、絶対にあの子と仲良くなりたい!みたいな子もいなくて、悩んだ事はなかった。

今世では、侯爵家令嬢なので、お茶会などで趣味が合う令嬢方とわいわい集まって会話していた。私は聞き役に回ることが多く話題に困ったことは無い。


という訳で、私はあまり話し上手じゃないんだ。


「はぁぁぁぁ……」


1日過ごしただけでこんなにも疲れたのはいつぶりかしら。

今日は、落ちこんでは立ち直り、また落ち込み……。

ちょっと感情の揺れ動き激しすぎない?

情緒不安定なの、私!?


ただでさえトークが難しい────あのコミュ力抜群のヒロインでさえ難しかったフィンレイと会話するにはもっとコミュ力を磨かなければならない。


コミュ力を上げるためには…………お茶会でもすれば良いのかしら?


「そうよ。お茶会に参加すればいいのよ!」


手段が分かれば、実行簡単!

侯爵家令嬢のコネクションを利用させてもらうわよ。

オーホッホッホッホ!


口元に手を当て、悪役令嬢もかくや……という高笑いをする。


「……お、お嬢様……?」


アリシアの訝しげな視線を一身に受けながらも、打開策が現れた事により私のテンションは最高潮になっていたので、気にならないわ!



本日最後の更新です。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました!

暫くはストックがある為、1日2話程更新する予定です。

宜しければ、お付き合いくださいませ。

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