想い。 ~翌日~
以前投稿した「想い。」の中の描かなかった部分を友人の依頼で朗読シナリオとして作成。
彼女との約束を果たさなかった彼への恨み言や願いや気持ちの独白ができればとの思いにて書き上げた作品です。
朗読シナリオ・セリフ用として可愛がってもらえればとの思いです。
見上げた雲ひとつない空にはうっすらと真昼の月が浮かんでいる。
伸ばした手は届かない。
見上げる動作に呼応する様に首から下げたドッグタグと婚約指輪が、チリン、と音を立てる。
まるで「ここにいるよ」と言わんばかりに。
「なによ……一人にしたくせに。置いてったくせに。主張してんじゃないわよ」
寂しさと悔しさで涙が滲む。でも。
「あんたなんかのために泣いてあげないわよ。約束、破ったんだから」
握り締めると皮膚に食い込む冷たい金属と鉱石の感触。どんなに握ろうとも、もう彼の温かさは感じない。
「金属って、こんなに冷たいものだったっけ。あなたの首にかかっていた時はあんなにも温かかったのに」
どうして。なんでこんなに想っているのに、こんな悪態つかなきゃいけないのよ。こんな、こんなの。
「……寂しすぎるじゃない……」
見上げた雲ひとつない空にはうっすらと真昼の月が浮かんでいる。
伸ばした手は届かない。
まる、でもうここにはいない私の婚約者のように。
それでも。それがわかっていても。
「愛してる。今までも、これかかも。あなただけを愛してる」
月の側へ行った貴方に、この言葉は届いているのだろうか。
届いていると思わないとやってられない。
戻ってきて欲しいと、今までみたいに抱きしめて欲しいと、側に居て欲しいと想う。
でも今だけは
「お願い。今だけ、見ないで。」
空を見上げ、顔を覆った掌から、一筋の光が漏れた。
今だけ。
もうあなたに心配はかけない。
それが私の、私たちの新しい約束。
一方的なんて言わさない。
先に約束をやぶったのはあなたなんだから。
この先が「想い。」の後半部分へと続きます。