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魔王の住む大陸へ

 めぐみが祈りを捧げて光を降り注げた浄化は――それはもう、冒険者たちの間で噂になっていた。

 死体が綺麗に浄化されて、追加の魔物襲撃を免れたのだ。加えて、処理をする手間も省けた。このおかげで、村の負担はぐっと減った。


 そして今は、目的地を目前に控えた馬車の中。


「でも、いったいあの光はなんだったのかしら。グミは何もしらないの? 近くにいたと思ったのだけれど……」

「いやぁ、私も狼の処理で大変でしたから、全然分からないです」


 まさか自分が浄化しました! と、言うわけにもいかない。

 あははと笑いながらごまかして、知らんぷりを決め込んだ。


『まぁ、そんなのはどうでもいいさ』

「うさちゃんは気にならないの? まぁ、確かに考えても原因はわからなさそうだけど……」


 クラリスがつまらなさそうにするが、メデュノアもこの話題を広げていくつもりはないのだ。何と言っても、犯人がめぐみなのだから。

 しかも、間違いなくセレイツが気付く案件だ。素早く移動して、魔大陸に一刻も早く移動をしたいとメデュノア考える。


「でも、もう十日。グミともここでおわかれなんて、寂しいわね」

「うん。女の子とおしゃべりするのは、私もとっても楽しかったよ」

「ありがとう。また、依頼をするときはグミにお願いしたいわね」


 クラリスは、めぐみがこの世界で初めて仲良くなることが出来た女の子だ。寂しいなともおもうけれど、めぐみがこれ以上一緒にいると、きっと迷惑をかけてしまう。

 セレイツが追ってきたときに、クラリスを巻き込むわけにはいかないのだ。


「でも、きっとまたどこかであえるわ。商人って、縁を大事にするのだもの!」

「うん。絶対あえるね、約束!」


 笑い合って、めぐみとメデュノアはクラリスと別れを告げる。

 無事に、護衛の仕事を終わらせることが出来たことに、安堵した。ここから先は、魔大陸への冒険だ――。




 ◇ ◇ ◇


「おぉ、すごい。海だね、港街だね」

『ああ。ここから船で海を渡って、魔大陸――アルバディスト大陸に渡る。ただ、丁度船が出てるのかは調べないと駄目だな』

「うん」


 めぐみとメデュノアは、さっそく船乗り場を見付けて船の状況を確認することにした。

 海に沿ってゆっくり歩けば、対岸に見えるうっすらとした陸地。以外に近いところにあるんだとめぐみが納得していれば、じっとメデュノアがそれを見ていることに気付く。


「懐かしい?」

『ん? いや、別に……』


 ――故郷が恋しいと思ったんだけど、違ったのかな?


 メデュノアを普通の魔物だと思っているめぐみは、単純にそう思った。もいろん、知能がある時点で普通の魔物ですらないのだが、あまりこの世界を知らないめぐみは気付かない。


『うーん?』

「?」


 めぐみの腕の中で、何かを考えるようにメデュノアが唸る。が、原因はわからなかったらしく『まぁいいか』と自己解決をしていた。

 問題がないならばいいけれどと、めぐみはそのまま船の手配をしてくれる人を捜すことにした。


 しかし、中々上手いこといかなかった。

 魔大陸への船は、中々出ていないらしい。

 この大陸よりも、魔大陸には強い魔物が出るらしい。そのため、冒険者たちが行く時か、十分な護衛を雇える人が行くときにくらいしか船は出ないらしい。


「船代も結構かかるもんねぇ……」

『そうだなぁ……。だから冒険者は、ギルドで人数を募集して複数人で行くんだ』

「なるほど」


 それならば、一度ギルドにいってそういった募集があるのか確認をしてみるのもいいかもしれない。そう思いながら、めぐみは港を後にする。

 しかしやっぱりメデュノアが首を傾げているので、どうしたのだろうかと心配になってしまう。


 ――ノア、調子が悪いのかな?

 今日は早めに宿を取った方がいいかもしれない。そう考えて、めぐみはとりあえず休めるように宿を取った。




 ◇ ◇ ◇


「はふー!」


 小さな宿に部屋をとり、めぐみとメデュノアは一息つく。

 気がかりなのはメデュノアだ。今はころんとベッドの上でのんびりしているのだが――具合が悪いのだろうかと心配になる。


『……たぶん、魔力が強いから影響されてるんだろうな。ほら、ここはアルバディストに近いだろ?』

「うん。ノアは私が勝手に召喚しちゃったから、その影響とかあったりするの? 急にただのうさちゃん人形になったり……しない?」

『しないしない、大丈夫だ』


 突然メデュノアがいなくなって、ただのしゃべらない人形になってしまったら。そう考えると、とても怖い。

 いなくならないでと、すっかりメデュノアが一緒でないと駄目になってしまっためぐみだ。依存しているなと自分でも思うけれど、この世界で信頼できる人はあまり多くない。


『ちょっと寝るー』

「うん。私はちょっとだけギルドを覗いてくるよ」

『一人で平気か?』

「うん。場所はさっき教えてもらったからね! ノアは寝て、ゆっくり休んでて」




 ◇ ◇ ◇


「今はアルバディスト行きはないの。昨日船が出ちゃったばっかりなのよ……。はやくて、そうね――二週間後くらいかしら?」

「二週間……」


 迷わずギルドにきためぐみは、船がしばらくないことに肩を落とす。

 メデュノアが動けないのであれば自分が動こうと、そう思ったのになかなか上手くいかないものだ。


「あなたが募集をかけるという手もあるけれど、どうします?」

「私が? うーん……。相方がいるので、ちょっと確認してみますね」

「ええ。またのご利用をお待ちしてますね」


 ギルドの受付の女性にお礼を言って、めぐみはギルドを後にした。

 正直に、二週間の滞在は金銭的にも辛い。メデュノアがくすねてきた慰謝料があるけれど、さすがに辛いところだろう。

 正式な慰謝料の金額をしらないめぐみは、もちろん余裕に一年も暮らしていけることは知らないが。


 宿への道をのんびりと歩き、露店などを横目で見ながら街の雰囲気を楽しむ。

 何かメデュノアにお土産でも買ってあげたいところだが、何が好きなのかと考える。めぐみは、思っている以上にメデュノアのことを知らないなと思う。


「人形だから何も食べないし……。となると、装飾品?」


 しかし、うさちゃん人形に何か付けてもごてごてしてしまいそうだ。

 それならば、玩具?


 ――って、そういえばノアが何歳なのかも知らないや。

 外見が可愛いうさちゃんだから、ついつい子供用品を考えてしまう。俺様な口調、深い知識、決して若くはないだろうと思うのだが――おじいちゃんも嫌かな。なんて、笑いながら考える。


「せっかく護衛のお給料だし、ノアに欲しいものを聞いてみよう!」


 うんうん、それがいい。そう考えると、宿までの足取りが一気に軽くなる。

 しかし、めぐみはまだ知らない。宿屋で待ち受けている真のメデュノアを――。

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