桜と嘘
窓に映る私は誰なのか
いつも教えてくれる桜。
季節が過ぎても咲いていてくれる。
暖かい便りが風に乗り
いつも側にいてくれる桜。
去らない匂いが教えてくれる。
夜も更ければ月の雫に
窓ガラスに伝う泣き声。
雨に濡れて一つに重なりながら
堕ちては消える。
私を呼ぶ声は誰なのか
尋ねても黙り込む桜。
嘘を付いてもくれない桜。
季節を代える便りが届き
窓を叩く破片の一つに
知らない世界を教えて散った。
もう尋ねないから
もう知ろうとしないから
もう望まないから
新しい嘘をもう一つ教えて下さい。
新しい季節に埋もれない様な
優しい嘘。




