空を飛ぶ
「あれ? 車使わねぇの?」
ログアウトする前に一度、ギルド「深窓の宴」本部に立ち寄る必要のあるカナリアは、ジャッジに送ってもらう事になった。
「はいっ。一度でいいから乗ってみたかったんです」
そう言って、カナリアがジャッジ所有のグリフォンに頬擦りしていた。確か、以前のレイド戦のときシュウのグリフォンに乗ってなかったっけ? とディッチは思ったが、あえて口に出さないでおいた。
「じゃあ俺も、ペガサス使うかね」
そう言って呼び出す。もう一人連れて行くとしたら、誰なのか。少しだけ考えてスカーレットに頼んだ。
今回の出来事は、ディッチたちにとって嫌な予感しかしないのだ。
何かあったとき証言するつもりではいるが、カナリアの親がそれを許すはずもない。
「さて、行くか!」
ちなみに、スカーレットが乗るのは大鷹だ。姿形をそのまま巨大化させた感じがするため、こわがるPCも多い。
「わ、本当に鷹だ」
「カナリア君は、それで済むんだね」
「え? だって可愛い鷹よりも凛々しい鷹の方がいいと思います」
「一応、空を駆ける騎獣には、他に大鷲とか大梟もいるからね」
「そのうち、友達になりたい」
その発想にディッチは思わずカナリアを見た。騎乗クエストの獣たちは「召喚」するという常識を覆す発想だった。
「ははっ。友達か。いいかもしれない」
ジャッジも楽しそうに笑っていた。
カナリアの笑顔を見たのは、これが最後だった。
ちょいと次回からしばらく暗いお話になります。
一応の伏線として、ととさんとスカーレットさんは警察官です。本当はディッチも警察官にしたかったととさん。ところがどっこい、ディッチは教師の道を選びました。選んだ理由については、そのうちユーリさんとの馴れ初めも含めて書きたいと思います。
それからパパンさんは某会社の役員。しかも創業一族のお方です。
かかさんとママンさん、それからユーリさんは専業主婦。かかさんは元婦警さんです。実は怒ると怖い組み合わせは、かかさんとママンさんです。タッグ組んだら、容赦ない。それこそ自分の身内にも辛らつですw




