表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/434

見守る人々

 またログインすれば、先日ログアウトした場所でセバスチャンがにっこり笑って立っていた。

「さて、本日は冒険者ギルドに行き冒険者登録をしましょうか」

 登録してから今日はフィールドに出る計画らしい。

「ここは『TabTapS!』に登録した人たちが最初に訪れる町です。別名『初心者の町』。大抵の方がすぐここから別の町に移動するので閑散としております。ですがミ・レディの場合は長期に渡りご厄介になる気がいたします」

 これに言い返せないカナリアである。

「逆にあんまりいないからゆっくり出来ていいかな」

「ミ・レディ、何を仰っているのですか。閑散としているということは、フレンドが出来にくいということですよ。最初は私と二人で大丈夫でしょうが、後々受注するクエストには『○人以上』とか、『フレンド登録されている者どうしてのみ受注可』というものもあるんです。それからクラン単位でのクエストというものもあります。

 ですから、ここでのんびりするわけにはいかないんですよ」

「くらん、って何ですか?」

「プレイヤーたちの作る組織、のようなものでしょうか。仲のいい友人と作る方もいらっしゃれば、目的を同じにした方と作る場合もあると聞いています。

 ですので、一人でやるというのは結構難しい場合もあるのですよ」

 だが、これはかなりマイナーなゲームと聞いた。

「マイナーであれ、サービス提供を続けているということ自体、それなりのユーザーがいるということですよ。ミ・レディ、私はAIですが、ミ・レディはそれ以下の知識しか持ち合わせていないんですか?」

「うん。これが初のオンラインゲームですから」

「初の、VRMMOではなく?」

 珍しくセバスチャンが重ねて訊ねてきた。

「はい。親が許さなくて、購入する時も保護者欄はお祖母ちゃんでした」

「……そうですか。では、尚更厳しくいかせていただきます。とりあえず武器の使い方、魔法の使い方は早いうちにマスターしてしまいましょう」

 いきなりそんな宣言をされると、カナリアもどうしていいか分からない。

「辞めたいと思うほど、厳しくはいたしません。基本操作だけでも早いうちに覚えておくといいかと思いますので」

「はいっ!」

 美玖は喜んで返事をしたが、『TabTapS!(このゲーム)』において、AIに色々レクチャーしてもらうユーザーなどいない。

 大抵が他のVRMMOに飽きて始めるのだ。


 そんな話をしていたら、町にたどり着いた。

「ようこそ~~。別名『初心者の町』へ。本当の名前なんて誰も言ってくれないから忘れちゃったわ~~」

 軽いノリのお姉さんにカナリアが挨拶をしていたが、セバスチャンが少しだけ呆れていた。

「彼女はNPC、つまりノンプレーヤーキャラです。この町のほとんどがそうですが、見分け方もタブレットかスマートフォンで出来ますから」

「町でもタブレットは出せるの?」

「出せないと困りますね。町の情報、例えば雑貨屋や道具屋などどの位置にあるか調べられませんから」

「|タブレット《TabletRetrieve》」

 ぽん、っとタブレットが出てきた。

「……そうですね。まずはタブレットの操作から慣れましょうか。

 では、『町情報』のアイコンをタップして、『冒険者ギルド』を探してください」

「えっと……町情報……町情報……」

 四苦八苦している姿を、まさかNPCたちが応援せんばかりに見つめていたということを、カナリアは知らない。

 町情報から冒険者ギルドを探し出し、タップした。

 すると、町の地図が出てきて現在地とギルドの場所が表示された。

「本日はタブレットを見ながら冒険者ギルドに行きましょう。そのうちタブレットを見なくても行けるようになってください」

「……はい」

 実はこの機能、現実世界でも使われているものだということをカナリアは知らなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[良い点] 親御さんからゲームやタブレット端末を与えてもらえなかったがゆえの不慣れですね( ノД`) ちょっとずつ覚えてがんばれ、と心の中で応援しちゃいます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ