近づく春
いつもありがとうございます
「ジャッジの場合は、他のやつらと組ませたくないんだろうな」
そんなことをさらりと言ってのけたのは、もちろんジャスティス。ユウも頷くあたり、まず間違いないだろう。そんなことをイッセンは思った。
「カナリアちゃん自身、ソロで動くの難しいしね。他の男どもにまとわりつかれたくないってのはあるんだろな」
「間違いなく。しかもカナリアに突っかかってきたのがトールとシュウ。あとはそいつらに付随するマナーの悪い男プレイヤーどもばかり。心配にはなるだろうがな」
一応、「カエルム」と「神社仏閣を愛する会」のメンバーに対して目くじらを立てることはほとんどない。プレゼントをこっそり貰ったのがばれるとしばらく不機嫌になるくらいだ。
ジャッジの心の狭さは置いておくとして。そんなことをのたまったのはユウである。
「俺的には今更だと思うんだよね」
「ユウさん、何が?」
「カナリアちゃんのプレイスタイル変更。もう、あれで確立されているし。というかさ、『TabTapS!』と『World On Line』以外やらないと思うし」
というか、今後ゲーム自体をほとんどやらないと思うよ。あっさりと言ってのけた。
「理由、聞いていい?」
「多分だけど、カナリアちゃんにとってゲームって『自由』の代名詞だったように思うんだよね。それから、憧れ。この中の『自由』ってある意味もう手に入れているでしょ。
確かにそうかもしれない。イッセンには否定する術がない。
「それに、今じゃ色んな人との繋がりが出来てる。それはゲームを繋がなくとも大丈夫なものでしょ。だとしたら、カナリアちゃんの場合、ゲームをする必要性ってものをあまり感じないんじゃないかなって話」
「そうかもしれんが、ジャッジが傍にいる限りやると思うがな」
ジャッジがやるのだ。カナリアも一緒になってやるだろうというのがジャスティスの言い分だった。
なんだか、ジャッジから「お目こぼし」をいただている気分になるイッセンだった。
それに関してはジャッジから「そんなつもりはないぞ」と後日言われたのだが、他のメンバーと「無意識に思っている可能性あり」ということで纏まったのだった。
そして、間もなく春になる。
それは、カナリアが十八を超えることを意味し、正式に「溝内 美玖」になるということだ。




