現実世界にて<親子行事から家族行事へ>
いつもありがとうございます。
親子行事が「家族行事」へとシフトチェンジしてしまった現在、良平は頭を抱えていた。
爺馬鹿、婆馬鹿を前面に出した四人が、ここぞとばかりに美玖に色々買おうとするのだ。
「あまり言いたくないけど……」
「孫は可愛がるもの!」
ちょっと遠慮してよ、そう言いたかったのだが、四人があっさりと口を揃えて同じことを言うのだ。なす術なし。思わずでかいため息が漏れたとしても仕方がないのである。
「……う――。あのっ」
もじもじとしていた美玖が、悠里に励まされ四人の前に行く。
「色々買っていただけるの、嬉しいです。でも、使い切れないので、……なくなったらお願いしていいですか?」
「勿論!」
美玖の性格からして、「無くなったからお願いする」ということはないだろうが、そうやって言っておくことでこれ以上の買い物を防いだようである。
「こういう頼み事は美玖君に言わせるか」
「それが一番ですわね」
物欲がない美玖は、あまりものを持たない。多少買い与えるのは黙認するが、物事には限度というものがあるのだ。
「どうしましょうかねぇ」
ぼそりと、さゆりが呟いた。
「お義母さん、いやぁぁぁな予感がするのですが」
さゆりの手にあるのは分厚い茶封筒である。まさかと思うが、美玖が「欲しい」といったものを買うためだけに、ある程度の金をおろしていたとかないよな、と内心焦っていた。
「わたくしではないの。禰冝田の方々から『美玖ちゃんに色々買って』と昨日のうちに渡されたらしくて」
「参考までにおいくらほど……」
「四つほど束があったのだけは記憶しておりますけど、あとはバラバラでしたもの」
うっそん。先ほどそのうち二束は銀行に預けてましたよね!? 金持ち怖い。バラバラのものも、集めれば束になりそうなのは言うまでもないだろう。
「……その辺りは美玖君の成人式用衣装に回していただけませんかね」
「四つほどの束でいい振り袖は買えませんわよ」
いや、振り袖から離れましょうよ!! と思わず内心突っ込みを入れた良平だった。
「そ……そのあたりのお金は、習い事の時に使っていいですか?」
そう提案する美玖の声も震えていた。
「そうねぇ。だとこのお金はお養母様に渡しておきましょう」
その言葉に、良平と美玖が安堵し、同じような動きをして悠里を和ませていたというのは、帰ってから聞かされたことである。
それはさておき。
三人から七人に増えたとはいえ、楽しむことには変わりはない。
美術館で目をキラキラさせながら悠里と美玖は美術品を見ていたりするのを見るのは、何ともいいものだが、それ以上に博物館で良平の説明に耳を傾ける美玖は、学校にいた頃と比べ生き生きとしていた。
今回のお出かけで再確認したのは、美玖が理系、特に物理や化学が苦手だということであった。
「化学も物理も面白いのに」
「面白いのと得意は違うと思います」
こうやって言い返すようになったことも、成長だと思える良平だった。
おいらも物理苦手です(現在進行形




