現実世界にて<親子行事は前途多難>
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保養所に迎えに来た良平と悠里は、出鼻をくじかれた。
美玖がまだ起きていないという。
「すすすすみません――――!!」
寝ぐせがついたままの頭で、パタパタと走ってくる美玖はまるで小動物のようだと、二人は思った。
「髪の毛を梳きましょうね」
「……はい」
しょんぼりとうなだれながらも、美玖は悠里のなすが儘になっていた。
「仕方あるまい。興奮して寝付けなかったようじゃからの」
「おばばさんっ!」
それは言わないでと美玖が慌てるものの、昌代は「起きなかった方が悪い」と一刀両断していた。
「楽しみにしていただけたようで何よりです、美玖ちゃん」
「ふぁい」
欠伸をしながら美玖が答えていた。
そんな二人を見守ることしばし。不思議そうな顔で、悠里が良平を見つめていた。
「いやね、もっと早く引き取るって決めれば、こんな和む光景をもっと見れたのかと思ってた」
「私もです。今美玖ちゃんの髪を梳いて、『あ、この子は私の子だ』って思いました」
少し離れたところで朝食をとる美玖を眺めつつ、二人は話す。
化学教師として馬鹿げているかもしれないが、「やっと自分たちのところに戻ってきた」と思えてしまうのだ。
「巡りあわせとは不思議なものじゃ」
すべてを言ったわけではないのに、見透かしたように昌代が呟くが、反論できない二人だった。
「美玖ちゃん、歯を磨いてきました?」
「はいっ。顔もきちんと洗ってきました!」
……どこのママと幼稚園児の会話だ。そんなノリの話を悠里と美玖は繰り返していた。
「ティッシュとハンカチもありますわね。それから、今月のお小遣いです」
「えっと、今まで貰ったたくさんのお小遣いがあるので……」
「うふふ。娘に毎月お小遣いを渡すという行事もやってみたかったの。そちらは貯金して別のことに使いましょう」
そっちは何か入用の時に使えと、悠里が諭していたものの、そのままそっくり(しかもはだかで!!)今まで貰ったお小遣いを持って来た時には、二人揃って固まった。
「貯蓄しておけといったはずじゃが」
「はいっ! 今までは『お父さん』も『お母さん』がいなかったので私が机にしまってました。こういったのは、親か祖父母が管理するんだって聞いてましたので」
あの馬鹿どもがっ! そうやって貰ったお年玉などを着服していたのだろうと思うと、腹が立つ。
が。美玖も強かで、母親親族から貰えるお小遣いの大半は千沙に預けていたと判明。それで「親か祖父母」なのだろう。そのお金で初VRゲームをやったのだ。千沙に感謝しかない。
「このお金は、大事な時のために取っておくといい。今日、銀行で通帳作るから、美玖君が預けなさい」
そして、その通帳をしっかり管理しなさい。良平はそれしか言えなかった。
そんなわけで、おでかけコースは若干変更。まずは銀行へと向かうことになった。
そして、何故か銀行にお金を持った良平と悠里の両親が待ち構えていたのだが、それはまた別の話である。
両家の両親? そらもう、昌代さまに情報貰ったら即動きますよ(;^ω^)
しかも「あたしからのお小遣いもよろしくね!(晴香)」とか「我々も~~(禰冝田家面々)」からもお金を預けられていそうです。
多分、あっという間に美玖の口座には一般的サラリーマンの年収分が貯蓄されそうな予感(羨ましい)




