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初心者がVRMMOをやります(仮)  作者: 神無 乃愛
新素材発掘の旅

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ある日突然に

いつもありがとうございます。

遅くなりました。そして、新章開始です!


 大量に出た熊肉を目の前に、カナリアは唸っていた。この熊肉、やたらと筋が固すぎる。煮ても焼いても食えない。

「セバスチャン、どうしましょう」

「どうしましょう、と私に振られましても。ドラゴンたちも食い飽きてきておりますからね」

 そうなのだ。最初の頃は喜んで食べていたドラゴンたちも、最近は露骨に嫌そうな嘶きをあげる。しかも、倉庫をやたらと圧迫するので、放置というわけにもいかない。

 熊の皮革関係は現在もカナリアがアクセサリーに使ったり、ジャスティスも皮鎧を作るために引き取ってくれる。他の部位も然り、である。

 肉に関してだけ、どこにも引き取り手が無いためお手上げなのだ。

「さすがにお肉を肥料にする手段が分からないし」

 というか、ドラゴンの卵の殻を粉末にした時のことを思い出してしまう。

「カナリア、朗報だ」

 嬉しそうに言いながら倉庫に入ってきたのは、ジャッジではなくジャスティスだった。

「どうしたんですか?」

「今まで誰も行かなかった未開の地で、新たな素材が見つかったらしい」

 その言葉にカナリアはこてんと首を傾げた。

「俺も一部だけ見せてもらったが、今まで開発したテグスもどきよりも上等な絹糸だ」

「ほんとですか!?」

 新しい素材、そして上等な絹糸と聞いて、カナリアの耳はピンとたった。

「ただ、正直な話、ガセネタなんじゃないかと思っている。まずもって、その糸を探し出すのに、ガナル大陸の奥地に行かないとまずいらしい」

 ガナル大陸の奥地って……未開でも何でもないはずである。時折、カナリアもジャッジのお供でガナル大陸には行っている。

「だいぶ昔に話した内容は覚えてるか?」

 その言葉に、カナリアはこてんと首を傾げた。



 急きょ「喫茶・安楽椅子」の個室に「カエルム」メンバーが集まることとなった。



 ガナル大陸の奥地には二足歩行の猫がいるということ。そしてそこにいる猫の手癖が悪いこと。以前タカが話していたのはそこまで。

「どうもその猫がいるところよりもさらに奥に行ける……らしい」

 これが問題だと、ジャスティスは言う。

 ちなみに、一番ガナル大陸に出入りしているジャッジも、その二足歩行の猫を見たことがないのだ。

「ってか、その猫って……」

 呆れたように言うのは、ディッチだ。

 そう、某有名MMORPGに出てくるモンスターが元ネタだ。

「それに案内してもらった、ってのが当人たちの言い分。……ちなみに茶猫のほうな」

「クロネコは案内しないだろ」

 元ネタが元ネタなら。ディッチはその言葉を飲み込んだ。

「ってかさ、ジャッジ的にはどうなのよ」

 コーヒーフロートを目の前に、スカーレットが言う。

「ガナル大陸にも一応未開の地はあるが……。どうなんだろうな」

 楽しみ半分に、クリス(あの男)なら勝手に色々なものを増やしかねない。それが、ジャッジの言い分である。

「楽しみって……」

「十中八九、カナリアが作り出すアクセサリーだろうな。あとはレットの新作錬金とか、ジャスの作る服とか?」

「それだけでやりかねない人なの?」

「TabTapS!」制作の時に、ある程度関わったであろう、ユウが不思議そうに呟いた。

「やる」

「……お前が言うならそうなのかもしれんが」

「お主らは、ジャッジがどういう時に仕組む(・・・)かを考えれば、クリス殿が動くときも分かるであろうに」

 ジャスティスが少しばかり疑問を呈した口調だったのに対し、クィーンがあっさりと言う。その言葉で、ジャッジと古くからかかわりのあるメンツはすぐに納得した。

「とすると、クィーン殿もクリス殿が関わっている確率が高いと?」

「五割程な。あとは、持ってきた当人たちもクリス殿とどこかで関りがあってもおかしくはないの。ジャスティスのところに持ち込めば『カエルム』内で新素材の話が出るのはわかりきっておるしの

 しかし、釘抜紬(くぎぬきつむぎ)のような生地じゃの」


 釘抜紬とは主に、石川県で生産される紬織のことである。「牛首紬(うしくびつむぎ)」が正式な名前だが、釘も抜けるほどに丈夫なことから「釘抜紬」と呼ばれる。


 そんな説明をクィーンからされた「カエルム」メンバーは少しばかり呆れた。今、関係ないだろう、と。

「いや、関係あるぞ。『玉繭(たままゆ)』と呼ばれる通常ではほとんどあり得ぬ、二匹の蚕が一つの繭を作り出す。釘抜紬の横糸は、これを特殊な方法で紡いだものを使用しておる」

「……砂〇け婆様。もう少し分かりやすく言えや」

「全く、答えを教えてもらうだけでは意味が無かろうて。何も、新素材でなくとも、なんじゃ? あのシルクを作り出す蜘蛛。あれを二匹で無理やり一つの糸を作らせれば、同じようなものが出来るのではいのか?」

「あ、無理。共食いするから。共食いすると、シルクの光沢がなるなる」

クィーンの提案をあっさりと、ジャスティスが否定した。ジャスティスも釘抜紬に似たものを作ろうとして試したことがあったらしい。

その知恵はディスカスに貰ったものだが。

「とすると考えられるのは二つじゃな。これほど丈夫な絹を作れる生物がおるか、これほど綺麗は光沢を出せる植物があるかじゃな」


 クィーンの言葉を受け、「カエルム」メンバーはとりあえず(・・・・・)ガナル大陸の未開の地を探すことにした。



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