ジャッジ、美味しいところを取られる
いつもありがとうございます。
約一月ぶりの更新です。遅くなり申し訳ないです。
その熊の姿を見たカナリアは思った。最初に倒した熊を大きくしたようなものだと。
「……ウォールベアな。確かに懐かしいな」
ジャッジも懐かしそうに眼を細めた。
「カナリア、まずはAGIとSTR、VITをあげろ」
「え?」
「大きさからして、足元だけ斬りつけたってダメージはそんなにいかないぞ」
「……」
言われてみればその通りである。足の長さだけでプレイヤーの何倍もあるのだ。
「カナリアには足を斬りつけて転ばせて討伐なんて難しいし。素材のランクが落ちる」
「それは困ります!!」
素材のランクが下がるのはどうしても避けたい。出来上がるアクセサリーに違いが出てしまう。
「魔法でやるにしても、だいぶ毛皮が焦げ付くからな」
「どどど、どうやってたおすんですかぁぁぁぁ!?」
すでにカナリアはパニックを起こしている。ドラゴンとはほとんど対峙していない仲のいい間柄なので、巨大なモンスター討伐経験自体が少ないのだ。
「うーーん。レットだと、ディッチさんを足場にして上まで飛んで首を斬る。ディスだと狙いすまして、頭部破壊」
「どっちも無理ですぅぅぅ!!」
「参考までに言っただけ。俺はライフルで脳天打ち抜くけど」
もうそれで討伐してください。カナリアの喉元までその言葉が出かかった。
「倒し方は人それぞれだから、アドバイス出来ない」
「というか、マスターではカナリア嬢の戦闘の戦闘の参考にはなりませんよ。……ある意味脳筋ですから」
「おい……リース」
「事実にございましょう」
ジャッジの文句も何のその。リースはしれっと言い返していた。
「のうきん?」
「脳みそまで筋肉でできているような人物のことですよ」
「ジャッジさん、脳みそも筋肉なんですか!?」
「違うから!!」
「……そんなふざけたことを言っている場合ではありませんよ。とりあえず群れを倒しましょう。
無難なのは、まずいつものようにこちらの各種ステータスアップと、モンスターのステータスダウン。その後ミ・レディが風魔法でベアーグラントを転ばせ、ジャッジ様が首を掻っ切るという方法でしょうか」
それを聞いたカナリアの目がキランと光った。
「それでいきましょう!!」
……ジャッジの意見を聞くという選択肢はこの時すでになく、嬉々としてベアーグラントを転ばせていた。
いいところをAIたちに取られたジャッジは、無言で転んだベアーグラントの首を斬っていたとか、いないとか。
事実なのは、解体作業をAIであるリースとセバスチャンが淡々と行っていたということである。
ゲーム時間で一時間後、当初の目標である十体を大きく上回り、三十体討伐した二人がギルドに報告に来た。
三十体倒したからと言って、クエスト報酬が三倍になるわけではありません。十体分しか貰えません。
しかも、レットには不評です(連勤素材の足が早いため)。
ホクホクだったのは、皮革という素材を手に入れたカナリアだけですww




