表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初心者がVRMMOをやります(仮)  作者: 神無 乃愛
アップデートともう一つの楽しみ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

387/434

クリスへの感謝

いつもありがとうございます。



「クリスせんせー」

 バレンタインイベントも終わり、デスマーチもひと段落して「TabTapS!」に久しぶりにログインしたクリスに、ドワーフ族の少女が声をかけてきた。

 クリスを「先生」などと呼ぶ人間はいないはずだ。セラフィムたちは「マイ・マスター」か「主」と呼ぶのだ。

「クリスせんせー。お陰様で大学に無事受かりました!」

 そう言ってドワーフ族の少女は頭を下げた。

「……私が何かしたかい?」

「え? だってクリスせんせー、寺子屋で英語とドイツ語教えてくれましたよね」

 そんなこともあったかな、クリスからしてみればそんな感じだ。

「クリスせんせーが教えてくれなかったら、センター試験でドイツ語選択出来なかったし、英語のヒアリングも上達しなかったし」

 寺子屋というのが、ディッチたちの作った学習塾もどきだということにやっと気づいた。

「私は巻き込まれただけだ。設立したMr,ディッチたちにお礼を言いなさい」

「せんせーって自信家な割に、謙虚だよね」

 少女はクリスを見てからからと楽しそうに笑う。

「せんせーがさ、運営に顔が利くのはみんな知ってる。せんせーが止めないから、あたしたちはゲーム内で塾に通えた。知ってた? 下手な学習塾の講習に行くよりこっちで勉強してたほうが安いんだよ。

 あたしはここで勉強するようになってから、ワンランク上の大学目指せたし。巻き込まれて嫌そうにしながらも親切に教えてくれたじゃん。逃げることだってできたのにさ」

 逃げてしまえはジャッジとの関係が切れると思ったからだ。それに、クリスが講師を務めていたのも、クィーンとの誼を失いたくなかったし、クィーンの覚えめでたく、ジャッジを懐柔する手段としてカナリアとの関係を良好にしたかったという思惑からだ。


 そんな思惑などこの少女は知らないだろう。

「それからもうひとつ。受験生なのにゲームできたのが嬉しいんだ。だからお礼言いたかっただけ。じゃねーー」

 そんなことを言って、少女は嵐のように去っていった。


 そのあとも、受験生らしき人物に時折礼を言われることになった。


「……いいんじゃないんですか?」

 呆れたように神崎が言う。

「そんなことを言ったら、俺はただのサンプル集めですし。あと二年くらいサンプリングして、うまくいけば予備校やら学習塾に大々的に売り出せますし」

「それはわかるのだけどね。私なんて他の講師に比べれば授業に出ていないと思うんだが」

「あー、それね。日本のセンター試験の英語科目にはヒアリングというものが存在しましてね、あなたの英語は最適だったんですよ。日本のヒアリングテストってどうしてもアメリカ英語ですし」

 イギリス英語のカーティスでは難しいところがあったという。

「それにあんた、ドイツ語・フランス語話せるでしょ」

「他の語源も使うよ」

「いや、有体に言っちまいますとね、試験科目にある外国語って英語・ドイツ語・フランス語・中国語・韓国語なんですわ。つまり、あんたに習えば、うまくいくと三か国語教えてくれるわけですから、受験生には感謝されるわけですよ」

「……随分偏っている気がするね」

「それは文科省のお偉いさん方に言ってください。感謝される理由分かりました?」

「なるほどね。ありがたく感謝されておくか」

 くつくつと笑い、クリスは呟いた。


 それでこそあんたですよ、という神崎の言葉は聞こえないふりをした。


今回は珍しくクリスさんが感謝されました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ